2週間、個人開発の日々のタスクをできるだけ Antigravity のエージェントに渡してみました。何でも任せれば楽になる、という単純な話ではありませんでした。任せて肩の荷が下りたものと、途中で手元に引き戻したものが、思っていたよりくっきり分かれたのです。この記事は、その分かれ目を運用ログとともに振り返る記録です。
きっかけは v2.2.1 の変更でした。更新された OAuth トークンが OS のキーリングへ自動保存されるようになり、認証プロンプトで作業が止まる回数がはっきり減りました。以前は長い自動作業の途中で再認証を求められて中断することがありましたが、この2週間はその中断がほぼ起きませんでした。「途切れずに走り切る」前提が整ったことで、ようやく何を任せるかを落ち着いて検討できるようになりました。
任せて正解だったもの
まず、任せてよかったタスクを挙げます。共通していたのは、失敗しても取り消しが利く、結果を機械的に検証できる、という二点でした。
| タスク | 任せた結果 |
|---|---|
| 定型的なリファクタ | 命名の統一や関数抽出は、差分が読みやすく安心して取り込めた |
| テストの追加 | 既存の実装に対する回帰テストを量産でき、抜けの補完に向いていた |
| 多言語文字列の抽出 | ハードコードされた文言をリソースへ移す単純作業を任せられた |
これらはいずれも、間違っていればテストが赤くなるか、差分を見れば一目でわかります。私自身、レビューにかける時間より、任せて浮いた時間のほうが明らかに大きく、二週間の後半はこの種の作業をほぼ手放していました。認証で止まらなくなったおかげで、就寝前に回帰テストの補完を投げておき、朝に差分だけ確認する、という運びも定着しました。以前なら夜中に再認証で止まっていたであろう作業が、翌朝そのまま結果になっている感覚は、想像より快適なものでした。
手元に残すべきだったもの
一方で、いったん任せてから引き戻したタスクもありました。境目は「取り消しのコストが高いかどうか」でした。
課金まわりの設定変更は、その典型です。私は個人開発で App Store と Google Play の両方にアプリを出していますが、価格やサブスクリプションの構成は、間違えると実際の売上や既存ユーザーに直接響きます。エージェントの提案自体は妥当でも、最終的な適用は自分の手で行うと決めました。公開申請も同じで、審査に出す最後のひと押しは人が握るべきだと考えています。破壊的なスキーマ変更のように、後戻りに大きな手間がかかる操作も、私は手元に残しました。
エージェントが自信満々に間違える瞬間
もう一つ学んだのは、エージェントの自信と正しさは別物だという点です。ある日、依存関係の更新を任せたところ、破壊的変更のあるバージョンへためらいなく上げ、しかも説明は堂々としていました。テストが拾ってくれたので事なきを得ましたが、もしテストの薄い領域だったら、そのまま取り込んでいたかもしれません。以来、私は自信の度合いではなく、検証できるかどうかで任せる範囲を決めるようにしています。
任せ方そのものを設計する
任せるかどうかと同じくらい、どう任せるかも結果を左右しました。私は指示の冒頭で作業範囲を狭く言い切り、触ってほしくない領域を明示するようにしています。範囲を絞ると、エージェントが遠くまで手を伸ばして予想外の差分を作る事故が減ります。差分のレビューも、まとめてではなく機能単位の小さな塊で受け取るほうが、見落としが起きにくいと感じました。無人で長く走れるようになったからこそ、走らせる前に枠を決めておく手間が、そのまま安心につながっています。
私の線引き
二週間を経て落ち着いた判断基準は、拍子抜けするほど単純でした。取り消しコストが低く、結果を機械的に検証できる作業は任せる。取り消しコストが高い、あるいは検証が人の目に頼る作業は手元に残す。この一本の線を引くだけで、任せるかどうかで迷う時間がほとんどなくなりました。
キーリングへの自動保存で無人実行が途切れにくくなったことは、確かに任せられる範囲を広げてくれました。ただ、範囲が広がったからこそ、どこまで渡すかを自分で決める必要も増したように感じます。もし同じようにエージェントへの委譲を試している方がいれば、まずは「取り消しコスト」という一つの軸で手元のタスクを並べ替えてみることをおすすめします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。