◉ANTIGRAVITY LABEN
記事一覧/Agents & Manager
◈ Agents & Manager/2026-06-17上級

複数案を出させたあと、どれを採用するか — 検証で裁定する Best-of-N の設計

Gemini 3.5 Flash の速さで、同じ実装を複数案つくらせるのは現実的になりました。難しいのは生成ではなく裁定です。多数決でも自己申告の自信でもなく、検証可能な信号だけで採用案を決める Best-of-N アービターの設計と TypeScript 実装を共有します。

antigravity472マルチエージェント41Best-of-Nアービター検証8Gemini 3.5 Flash5運用設計27

✦ プレミアム記事

同じ修正を Antigravity のエージェントに3回投げて、3回とも違うコードが返ってきたことがあります。どれも一見もっともらしく、しかし1つはテストを壊し、1つは型が通らず、残る1つだけが実際に動きました。問題は「どれが動くか」を人間が毎回読んで見抜かなければならなかったことです。レビューに15分かかり、自動化したはずの作業が結局手作業に戻っていました。個人開発で複数のサイトを一人で回していると、この「人間が最後に毎回見抜く」工程こそが自動化の最大のボトルネックになります。私自身、ここを設計し直すまで、夜間バッチの成果を翌朝ずっと検品していました。

6/18 に Gemini CLI が Antigravity CLI へ統合され、動力が Gemini 3.5 Flash になります。Flash は同等タスクで上位モデルの数倍速とされ、1つの問題に対して候補を3つ、5つと並行生成しても費用と時間が現実的な範囲に収まります。つまり「1案を信じる」前提から「複数案から選ぶ」前提へ、設計の重心が移ります。

ここで主役になるのは生成側ではなく、**裁定側(アービター)**です。複数の候補をどう比べ、何を根拠に1つへ絞るのか。本稿はその設計に絞って書きます。

多数決と自己申告が当てにならない理由

最初に考えるのは「同じ答えが多い案を採る」多数決です。けれど LLM の誤りは独立ではありません。同じプロンプトと同じモデルから生成すれば、間違いも揃って出ます。3案のうち2案が同じバグを共有していれば、多数決はそのバグを「正解」として選びます。

次に思いつくのが、モデル自身に自信度を答えさせる方法です。これも危ういものです。自己申告の確信度は、実際の正しさとほとんど相関しません。流暢で断定的な誤答ほど高い自信を返すことすらあります。

採用基準は、生成モデルから独立した、検証可能な信号でなければなりません。コードであれば、型が通るか、テストが緑か、実際に起動するか。これらはモデルの気分に左右されない客観的な事実です。アービターの仕事は、候補をこれらの事実に通し、生き残ったものを選ぶことに尽きます。

設計の全体像

パイプラインは3段に分けて考えると整理できます。

段責務独立性
生成(Generator)同一仕様から N 個の候補を並行生成するモデル依存
検証(Verifier)各候補を客観ゲートに通しスコア化するモデルから独立
裁定(Arbiter)スコアと予算から採用案を1つ決める規則ベース

肝心なのは、検証と裁定を生成から完全に切り離すことです。生成側がどのモデルでも、何案でも、検証と裁定のコードは変わりません。この境界を守ると、モデルが入れ替わっても評価基準は安定します。

✦

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事の続きを読む

この先には、実装コードやベンチマーク結果など、実務でお役に立てる内容をご用意しています。このサイトは広告を掲載しておらず、サーバーや開発にかかる費用はメンバーの皆様のご支援で成り立っています。もしお役に立てていましたら、ご支援いただけますと大変ありがたいです。

この記事で得られること
✦候補を多数決や自己申告ではなく検証可能な信号で裁定する、Arbiter の全実装コード(TypeScript)を取得できます
✦型検査・テスト・スモーク実行を段階ゲートで走らせ、早期に脱落させてコストを抑える評価順序の設計が分かります
✦全候補が落ちたとき・同点のとき・予算上限に達したときの縮退戦略と、実運用で踏んだ落とし穴を学べます
Stripe による安全な決済 · いつでもキャンセル可能
✦

この記事を購入する

この先の内容をすべてお読みいただけます。一度のご購入で、いつでも何度でもアクセスできます。このサイトは広告を掲載しておらず、皆さまのご支援がサーバー費用などの運営を支えています。

または
メンバーシップなら全記事が読み放題 →
シェア

お読みいただきありがとうございます

Antigravity Lab は広告なしで運営しており、サーバー費用などの運営コストはメンバーシップのご支援で賄っています。実装コード・ベンチマーク・本番設計パターンなど、実務でお役立ていただける記事を毎日更新しています。もし読んでよかったと感じていただけましたら、ぜひご覧ください。

  • ✦コピー&ペーストで使える実装コード付き
  • ✦毎日新しい上級ガイドを追加
  • ✦¥580/月 または ¥1,480 の永久アクセス
メンバーシップを見る →

関連記事

◈ Agents & Manager2026-06-01
並行エージェントのトークンコストを予算で抑える — 暴走を止めるバジェットガードの設計
複数のエージェントを並行で走らせると、トークン費は気づかないうちに膨らみます。トークンを減らす最適化ではなく、予算で消費を遮断するガバナンス層を Antigravity の並列エージェントに組み込む設計と実装を、運用で決めた閾値とともに共有します。
◈ Agents & Manager2026-10-13
「いつもの感覚」で決めている判断を、エージェントに渡せる文章に直す手順
頭の中だけにある判断基準を、Antigravity のエージェントが同じように使える文章へ直す手順です。過去の事例で試し、ずれた箇所だけ直す小さな検証つきです。
◈ Agents & Manager2026-09-08
/boost が「検証済み」と返してきたとき、その worktree に何が無かったのかを先に数えています
Antigravity の /boost は使い捨ての隔離ワークツリーでテストを走らせます。手元のビルドが git に入っていないファイルへ依存していると、その検証は別の木の上で通ります。ずれを先に数える手順を書き残します。