「Antigravityは実際どうなのか」という問いに、エンジニアとアーティストの両側から1年間使い続けた体験をもとに答えます。
スペックや機能の比較は他の記事に任せて、ここでは実用上の正直な感想を書きます。良いことも、まだ物足りないことも含めて。
なぜAntigravityを使い始めたか
もともとアプリ開発とアート制作を並行してやっている立場として、コーディングツールに求めていたのは「ゼロから書くのを手伝ってくれること」より「私がやりたいことを一緒に考えてくれること」でした。
Antigravityを試してみたとき、最初に驚いたのは「コードの変更前後を一緒に確認できる」という設計でした。Cursorにも似た機能はありますが、Antigravityのインターフェース設計はビジュアルで確認しながら作業できる感触があり、デザイン作業との境界が薄くなる感覚がありました。
1年使って良かったこと——正直な3つのポイント
1. 「計画モード」と「高速モード」の使い分けが自分の思考に合っている
Antigravityには大きな変更を設計する「計画モード」と、小さな変更をすぐに実行する「高速モード」があります。この2モードの存在が、私の作業スタイルに合っていました。
新機能を追加するとき、私はまず全体の設計を考えてから実装に入りたいタイプです。計画モードで「この変更がどう影響するか」を先に確認してから、高速モードで実装を進める流れが、思考と作業のリズムを保ちやすくしてくれます。
2. コンテキストを渡すほどに提案の質が上がる
AGENTS.mdやKNOWLEDGE.mdにプロジェクトの文脈を書いておくと、提案の質が明らかに変わります。「このプロジェクトはミニマリストなデザイン哲学を持っている」「色はモノトーンに統一している」といったことを文字で伝えると、コード提案だけでなくコンポーネントの命名や構造にもその哲学が反映されてくるようになります。
これはアーティストとして仕事をするうえで特に重要で、「技術的に正しい」だけでなく「このプロジェクトの美学に合っている」提案が出てくるようになりました。
3. エラーを一緒に読んでくれる感覚がある
エラーが出たとき、エラーメッセージをペーストして「どういう意味か」と聞くと、Antigravityは技術的な説明だけでなく「このエラーが出ている状況でやりたかったことを達成するには、こうする方法もある」という形で回答してくれることが多いです。
エラーを「解決すべき問題」ではなく「学びの入口」として扱ってくれる感覚があり、使い続けるうちにコードへの理解が深まっていく実感があります。
まだ物足りないと感じていること
正直に書くと、まだ課題も感じています。
グラフィックやアニメーションの指示が難しい: テキストや機能の実装は得意ですが、「このアニメーションをもう少し有機的に」「フォントの行間をここだけ広くしたい」といった視覚的・感覚的な指示の精度は、まだ自然言語ではなかなか伝わりません。最終的にCSSやアニメーションの数値を自分で調整することが多いです。
長時間のセッションでのコンテキストの揺れ: 1〜2時間を超える長いセッションで、最初に伝えたスタイルや制約を少しずつ忘れ始める傾向があります。こまめにKNOWLEDGE.mdを更新することでかなり改善されますが、「毎回全部伝え直す」手間はまだあります。
日本語でのコメント生成: プロジェクト設定で日本語を指定しても、コードコメントが英語になることがあります。一貫した日本語コメントを保つには、AGENTS.mdに明示的に「コードコメントは日本語で」と書く必要があります。
使い続ける理由——総合評価
Antigravityを使い続けている理由をひとつだけ挙げるなら、「一緒に考えてくれる」という感触があることです。
多くのAI IDEは「私の指示を実行する道具」という感覚が強いです。Antigravityはその感覚がやや薄く、「このプロジェクトで何を作りたいのかを理解しようとしている」雰囲気があります。アーティストとして作品に個性を持たせることを大切にしている立場から、この感触は使い続ける動機になっています。
ただし、Antigravityがすべての人に最適とは思いません。大規模なチームでの開発や、極めて複雑なバックエンドシステムには、他の選択肢の方が合っている場面もあります。個人開発者、クリエイター、アーティストとエンジニアを兼ねている人——そういった立場には、Antigravityは特に良い選択だと感じています。