◉ANTIGRAVITY LABEN
記事一覧/Antigravity 基本
◉ Antigravity 基本/2026-06-12中級

Antigravity をプロキシの内側で動かす接続設計

企業プロキシ・SSL検査・移動先のホテルWi-Fiなど制限ネットワークで Antigravity が沈黙する原因をレイヤー別に切り分け、証明書・NO_PROXY・接続プロファイルを安全側の設定で乗り越えるための実践ノートです。

antigravity470proxy3network3ssllocal-llm16

✦ プレミアム記事

2025年、海外に滞在していたホテルで、それまで快調に動いていた Antigravity のエージェントが突然沈黙しました。チャットは「送信中」のまま戻らず、タブ補完だけがときどき思い出したように働く。半日かけてたどり着いた原因は、ホテルの回線に挟まっていた透過型プロキシでした。HTTPS の一部だけが静かに書き換えられていて、ストリーミング接続だけが選択的に死んでいたのです。

接続トラブルの厄介さは、「ネットワークが悪い」という一言ではくくれないところにあります。Antigravity は認証、モデル API、エージェントのツール実行、拡張機能の更新といった性質の異なる通信を同時に張っていて、プロキシはそのうちの一部だけを壊します。結果として「補完は効くのにエージェントが動かない」「サインインだけが通らない」という中途半端な壊れ方になり、原因の見当がつけにくくなります。

私は普段、個人開発のアプリ群を、自宅と出先の回線を行き来しながらメンテナンスしています。企業ネットワークの内側から使うときも、ホテルの回線から使うときも、プロキシと認証サーバーの機嫌をうかがう感覚は変わりません。以下では、その両方の場面で少しずつ固まってきた「制限ネットワークで Antigravity を止めないための接続設計」を書いていきます。

Antigravity の通信は一本道ではない — 止まり方からレイヤーを逆引きする

Antigravity が外と話す経路は、私が観測している範囲で大きく5つに分かれます。

  • 認証系: Google アカウントのサインインと OAuth コールバック。IDE 内ではなく既定ブラウザを経由するため、IDE とブラウザが別々のプロキシ設定を見ているとここだけ失敗します
  • モデル API: Gemini などクラウドモデルとのやり取り。応答はストリーミングで届くため、長生きする HTTPS 接続を嫌うミドルボックスに最初に殺されます
  • エージェントランタイム: ツール実行で子プロセスとして起動される git・npm・curl 類。これらは IDE の設定画面ではなく環境変数を見ます
  • 拡張機能・更新系: マーケットプレイスと自動更新。失敗しても当日の開発は続けられますが、放置すると古い拡張が別の不具合を呼び込みます
  • ローカル LLM: Ollama や LM Studio への localhost 通信。ここは逆に、プロキシを「通ってはいけない」経路です

この5分類を頭に置くと、症状からレイヤーを逆引きできるようになります。

  • サインインだけ失敗する → 認証系。ブラウザ側のプロキシ設定と食い違っていないか
  • チャットが「送信中」のまま固まる → モデル API。ストリーミングがプロキシに切られている可能性
  • 最初の応答は来るのに途中で切れる → プロキシのアイドルタイムアウト。長文生成ほど切られやすい
  • エージェントのコマンド実行だけ失敗する → 環境変数が IDE に渡っていないことが多い
  • 直結環境では見えていたローカルモデルが見えない → NO_PROXY の不備
  • 何もかも繋がらない → キャプティブポータル未認証か DNS

私はこの対応表を作ってから、初見のネットワークで原因特定にかける時間が半日から10分前後まで縮みました。次のセクションで、その10分の中身を手順にします。

最初の10分でやる診断 — 現在地を5つのコマンドで確認する

設定をいじり始める前に、いまどのレイヤーで止まっているかを確かめます。闇雲に設定を変えると、直った理由も壊れた理由も分からなくなるからです。観測を先に、変更を後に。これは順番の問題ではなく、復旧時間を左右する分岐点です。

# (1) 環境変数にプロキシが入っているか — 「誰がプロキシを名乗っているか」の確認
env | grep -i proxy
 
# (2) キャプティブポータルに捕まっていないか — 204 が返れば素通りできている
#     (Apple の hotspot-detect.html は 200 と "Success" を返す仕様なので、204 判定には使えない)
curl -s -o /dev/null -w "%{http_code}\n" --max-time 5 \
  http://connectivitycheck.gstatic.com/generate_204
 
# (3) モデル API 系へ素の HTTPS が通るか・誰が証明書を出しているか
curl -sv --max-time 10 https://generativelanguage.googleapis.com -o /dev/null 2>&1 \
  | grep -E "issuer:|HTTP/"
 
# (4) プロキシ経由を明示すると通るのか(社内で配られている値を入れる)
curl -sv --max-time 10 -x http://proxy.example.co.jp:8080 \
  https://generativelanguage.googleapis.com -o /dev/null 2>&1 \
  | grep -E "CONNECT|issuer:|HTTP/"
 
# (5) ローカル LLM が生きているか — プロキシとは無関係に直結で返るべき
curl -s --max-time 3 http://127.0.0.1:11434/api/tags | head -c 120

(2) は Google が接続確認に使っている素朴な HTTP エンドポイントで、素通りできていれば本文なしの 204 が返ります。302 や、200 なのに HTML が返る場合は、回線が壊れているのではなく、まだホテルの同意画面を通過していません。ブラウザを開いて認証するのが先です。なお Apple の hotspot-detect.html も検出に使えますが、こちらは 200 と短い HTML を返す作りなので、ステータスコードだけで判定する上のコマンドには向きません。

(3) の出力で私が最初に見るのは issuer の行です。

# 直結できている環境の例 — 発行者が公的 CA
issuer: C=US; O=Google Trust Services; CN=WR2
 
# SSL 検査型プロキシの内側にいる例 — 発行者が見知らぬ社内 CA に化ける
issuer: O=ExampleCorp Security; CN=ExampleCorp TLS Inspection CA

issuer が見知らぬ名前になっていたら、その回線は HTTPS を復号して検査しています。後述の証明書対応が必須で、ここを飛ばしてプロキシ設定だけ変えても直りません。

(5) が応答しない場合は、Ollama 側の問題とプロキシ巻き込みの2通りがあります。Ollama 自体の診断は Antigravity でローカルLLM(Ollama)が接続できない・認識されないときの診断ガイド に書いたので、ここでは「プロキシ環境変数が立っているときほど (5) を疑う」とだけ覚えておいてください。

✦

ここまでお読みいただきありがとうございます。

この記事の続きを読む

この先には、実装コードやベンチマーク結果など、実務でお役に立てる内容をご用意しています。このサイトは広告を掲載しておらず、サーバーや開発にかかる費用はメンバーの皆様のご支援で成り立っています。もしお役に立てていましたら、ご支援いただけますと大変ありがたいです。

この記事で得られること
✦会社のプロキシ配下で Antigravity が無応答・証明書エラーになる原因を、5つの通信レイヤーに分けて自力で特定できるようになる
✦SSL検査・認証付きプロキシ・キャプティブポータルそれぞれに対する安全側の設定(NODE_EXTRA_CA_CERTS・ローカル中継・NO_PROXY)を実装できる
✦ホテルWi-Fiやテザリングでも開発が止まらない、ローカルLLMフォールバック込みの接続プロファイル運用を自分の環境に組み込める
Stripe による安全な決済 · いつでもキャンセル可能
✦

この記事を購入する

この先の内容をすべてお読みいただけます。一度のご購入で、いつでも何度でもアクセスできます。このサイトは広告を掲載しておらず、皆さまのご支援がサーバー費用などの運営を支えています。

または
メンバーシップなら全記事が読み放題 →
シェア

お読みいただきありがとうございます

Antigravity Lab は広告なしで運営しており、サーバー費用などの運営コストはメンバーシップのご支援で賄っています。実装コード・ベンチマーク・本番設計パターンなど、実務でお役立ていただける記事を毎日更新しています。もし読んでよかったと感じていただけましたら、ぜひご覧ください。

  • ✦コピー&ペーストで使える実装コード付き
  • ✦毎日新しい上級ガイドを追加
  • ✦¥580/月 または ¥1,480 の永久アクセス
メンバーシップを見る →

関連記事

✦ Tips & 活用術2026-04-22
Antigravity が会社のプロキシ・ファイアウォール環境で接続できないときの解決ガイド
会社のプロキシやファイアウォール越しで Antigravity がサインインできない、AIエージェントが応答しない。そんな企業ネットワーク特有のトラブルを、エラーログの読み方から証明書・プロキシ設定の具体的な手順まで解説します。
◉ Antigravity 基本2026-10-24
ファイルはあるのに「no such file」と言われる — Linux で同梱 ripgrep が動かないとき、見るのはパスではなくインタープリタ
Linux で agy の grep 検索だけが失敗し、ログに「no such file or directory」と出る。ファイルは確かに存在しているのに起きる理由を、ELF のインタープリタという視点で切り分け、再現手順と一時的な回避策までまとめました。
◉ Antigravity 基本2026-10-20
古い Android 端末だけが落ちる NoClassDefFoundError — エージェントに渡す前に私が揃える 4 つの手がかり
最新の端末では動くのに、Android 6 の端末だけがクラッシュする。Glide を上げた後に起きた Supplier の NoClassDefFoundError を例に、原因の切り分け順、coreLibraryDesugaring の設定、エージェントに調査を任せるときに先に揃えておく手がかりをまとめます。