平日の昼下がり、いつも通り Antigravity でエージェントに作業を振った瞬間、チャットパネルに Failed to fetch の赤い文字が並んで何も返ってこありません。コードを書いていた手は止まり、原因がローカル設定なのか、社内ネットワークなのか、それとも Google 側なのかが分からないまま時間だけが過ぎていきます。私自身、2014 年から個人で iOS / Android アプリを作りながら国内外を移動していると、ホテルの Wi-Fi や SIM 経由のテザリングで似た事象に何度も遭遇しました。今回は、その現場で実際に踏んだ手順を、原因が起こりやすい順に並べて整理しています。
「とりあえず再起動」だけで済ませると同じ問題が翌日また再発します。原因のレイヤーを上から順に剥がしていくのが、Antigravity のような複数のクラウド呼び出しを束ねる IDE では一番早い解決策だと私は感じています。
まず確認すべきは「どこまで届いているか」
Failed to fetch はブラウザ系ランタイムが投げる極めて汎用的なエラーで、Antigravity 内のチャット UI もこのメッセージをそのまま表示します。原因の切り分けは「リクエストが端末を出ているか」「経路上のどこで止まっているか」の 2 軸を意識すると速くなります。
最初に開発者ツール(Help → Toggle Developer Tools または Ctrl+Shift+I / Cmd+Opt+I)を開いて、Network タブを表示したまま再現させてください。判断基準はこの 3 パターンです。
- Status が
(failed)または空欄: 端末から外に出ていありません。ローカルファイアウォール・VPN・プロキシの可能性が高いです - Status が
407 / 502 / 504: 経路上の中継機器(社内プロキシ・SSL インスペクションなど)で止まっています - Status が
401 / 403または429: 経路は通っているが Google 側で拒否されています。認証または上限超過です
この最初の 1 分で原因領域を 1/3 まで絞れるので、再起動より先にここを見るのが私の習慣です。
原因 1: ログイン状態とトークンの期限切れ
意外に多いのが、ログイン情報の期限切れです。Antigravity は Google アカウントのトークンを内部に保持していますが、長時間マシンをスリープさせていたり、別のブラウザで同じアカウントを使ったりするとセッションが無効になります。
確認手順は次の通りです。
Ctrl+Shift+P(macOS はCmd+Shift+P)でコマンドパレットを開くAntigravity: Sign Outを実行する- 再度
Antigravity: Sign Inでログインし直す - ブラウザが立ち上がるので、Google アカウント認証を完了させる
ここで「ブラウザが立ち上がらない」「コールバック URL が localhost で止まる」場合は、ローカルの 8000 番台ポートを別アプリ(多くは Docker か Rails の開発サーバー)が掴んでいることが多いです。lsof -i :8765 などで確認してから、必要なら一時停止してください。
# macOS / Linux: コールバックポートを掴んでいるプロセスを確認
lsof -i :8765
# 期待される出力例(空であればOK、何か出ていれば該当プロセスを停止)
# COMMAND PID USER FD TYPE DEVICE SIZE/OFF NODE NAME
# node 23456 user 18u IPv6 0xabc 0t0 TCP localhost:8765 (LISTEN)
# Windows (PowerShell) の場合
# Get-NetTCPConnection -LocalPort 8765 | Select-Object OwningProcess私の経験では、ホテル Wi-Fi で外出中の作業に戻ると 8 割はこのトークン切れが原因で、サインアウト → サインインで復旧します。
原因 2: 社内プロキシ・VPN・SSL インスペクション
家庭外のネットワークでは、ここが一番の山です。とくに「社内 VPN を入れた瞬間に動かなくなる」「カフェの Wi-Fi では動くのにオフィスでは止まる」場合、企業のプロキシや SSL インスペクション(ZScaler、Netskope、Cisco Umbrella など)が Google API への TLS をミドルマンしている可能性が極めて高いです。
設定ファイルでプロキシを明示すると、多くの環境で復旧します。Settings → Network から GUI でも設定できますが、ファイルで管理した方がチームに共有しやすいので、私はワークスペース直下に置く運用にしています。
// .antigravity/settings.json (リポジトリ直下に配置)
{
"http.proxy": "http://proxy.example.local:8080",
"http.proxyStrictSSL": false,
"http.proxyAuthorization": null,
"http.systemCertificates": true,
// 社内ホストや localhost への通信はプロキシをバイパスする
"http.noProxy": [
"localhost",
"127.0.0.1",
"*.internal.example.local"
]
}ここで http.proxyStrictSSL を false にする判断は慎重にしてください。社内のルート証明書が OS の信頼ストアに入っていれば true のままで問題ありません。一時的に false にして繋がるなら、それは「証明書が信頼されていない」サインなので、IT 管理者に証明書配布をお願いするのが本筋です。私自身もここで止まったときは、true のままで動かない理由を突き止める方を優先するようにしています。
原因 3: DNS が解決できていない
「ブラウザでは google.com に行けるのに Antigravity だけ落ちる」場合は、DNS 解決失敗の可能性があります。Antigravity は *.googleapis.com や aiplatform.googleapis.com に通信するため、これらのホストが解決できないと Failed to fetch になります。
切り分けは ping や nslookup で行います。
# 接続先のホスト名が解決できるかを確認
nslookup aiplatform.googleapis.com
# 期待される出力例
# Server: 192.168.1.1
# Address: 192.168.1.1#53
# Non-authoritative answer:
# Name: aiplatform.googleapis.com
# Address: 142.250.196.138
# DNS over HTTPS を強制する場合(Cloudflare の例)
# macOS: networksetup -setdnsservers Wi-Fi 1.1.1.1 1.0.0.1
# Linux: /etc/resolv.conf に nameserver 1.1.1.1 を追記ここで応答が返ってこなければ、Wi-Fi ルーターやモバイル回線側の DNS が壊れています。私はモバイル回線で開発するときは、Cloudflare の 1.1.1.1 を端末側に明示するようにしてから、移動中の Failed to fetch がほぼゼロになりました。
原因 4: AI モデル側のレート制限とクォータ
Network タブで 429 Too Many Requests が返っている場合は、ネットワークではなくクォータの問題です。とくにエージェントが暴走して短時間に大量のツール呼び出しを行った直後に発生します。
すぐに効く対処は次の通りです。
Settings → AI → Concurrencyを 1〜2 に下げる(既定の 4 は速いがクォータを食いやすいです)- 同じセッションで動いていた他のエージェントを
Stopで全停止する Workspace → Trust → Reloadでフルリロードしてキャッシュされた失敗状態を解放する
長期的にはモデル側の上限申請が必要ですが、個人開発の範囲であれば 5 〜 10 分待てば自動で復旧します。私は累計 5,000 万ダウンロードのアプリを保守しながら Antigravity でツール開発も並行しているので、エージェントの並列度を増やしすぎないことが結果的に体感速度を上げる、というのは身をもって学びました。
原因 5: 社内ネットワークでの「Anti-Virus が握りつぶし」
Windows 環境では、ESET / Trend Micro / Symantec などのアンチウイルスソフトの「Web 保護」機能が Failed to fetch の真犯人であることが多いです。とくにグローバル設定で「TLS インスペクション」が有効になっていると、Antigravity からの API 呼び出しが透過的に書き換えられて壊れます。
切り分けには、一時的にアンチウイルスの「Web 保護」だけを 5 分停止して再現するかを確認してください。再現しなくなれば、Antigravity の実行ファイルを例外リストに追加します。実行ファイルのパスは Windows なら %LOCALAPPDATA%\Programs\Antigravity\Antigravity.exe、macOS なら /Applications/Antigravity.app/Contents/MacOS/Antigravity です。
関連する周辺トラブルへの対処
ネットワーク系で詰まった場合、近接するトラブルも併発しやすい性質があります。同じ時間帯に下記が起きていれば、根本原因を共有している可能性が高いです。
- Antigravity の MCP 接続が失敗するときの診断手順 — MCP サーバー側の TLS 失敗もネットワーク要因と重なります
- 社内プロキシ・ファイアウォール越しに Antigravity を動かすための設定 — プロキシ設定の詳細編
- .antigravityignore の落とし穴と効果的な使い方 — 通信量を減らすという別アプローチ
直らないときの最後のひと押し
ここまでで 9 割は解決するはずですが、それでも Failed to fetch が消えない場合は、ユーザー設定ディレクトリのキャッシュを丸ごと退避してから再起動してみてください。
# macOS の例
mv ~/Library/Application\ Support/Antigravity/Cache ~/Library/Application\ Support/Antigravity/Cache.bak
mv ~/Library/Application\ Support/Antigravity/Code\ Cache ~/Library/Application\ Support/Antigravity/Code\ Cache.bak
# Windows
# %APPDATA%\Antigravity\Cache を Cache.bak にリネーム破損したキャッシュが原因で、ログインに必要なクッキーが上書きできなくなっているケースを何度か見てきました。退避後に問題が再現しなければ、その日はバックアップを残したまま様子を見て、3 日経って再発しなければ削除する運用にしています。
ここまで来てもまだ動かない場合は、ネットワーク管理者と一緒に Wireshark で aiplatform.googleapis.com:443 宛のハンドシェイクを観察することになります。そこまで進む前に、今日のうちに Network タブと Antigravity: Sign Out → Sign In だけでも試してみるのがいちばん近道です。お読みいただきありがとうございました。同じ場面で詰まっている方の参考になれば嬉しいです。