「LovableとAntigravity、どっちを使えばいいですか?」という質問を受けることが増えてきました。
両方とも「AIがコードを書いてくれる」ツールではありますが、実際に使ってみると目指している体験がまったく異なります。短く答えるなら「何を作りたいか、どこまで自分でコントロールしたいか」によって答えが変わります。
ここでは実際に両方のツールを使って同じWebアプリを作った経験をもとに、それぞれが向いている場面と向いていない場面を整理します。
Lovable とは何か
Lovable(lovable.dev)は、「チャットでUI要件を伝えるとWebアプリが完成する」コンセプトのAIビルダーです。もともと GPT Engineer というプロジェクトから派生したサービスで、2025年末ごろから急速にユーザーを集めています。
Lovableの最大の特徴は、ビジュアルと生成AIを一体化させた体験にあります。チャット欄に「ユーザー登録とログイン機能つきのToDoアプリを作って」と打ち込むと、ReactとSupabaseを使ったアプリが数分で生成され、ブラウザ上でそのまま動作確認できます。コードエディタを開かなくても、画面を見ながら「このボタンをもっと右に」「カードの色を変えて」と自然言語で修正を重ねられます。
生成されるコードはモダンなスタック(React / TypeScript / Tailwind CSS / Supabase)で、品質は一定以上。プロトタイプを素早く作りたいときや、「コードは書けないけどアプリを作りたい」層には確かな価値を提供しています。
一方で、Lovableには明確な限界もあります。既存のコードベースへの対応が弱い点です。「自分のGitHubリポジトリを渡してここを修正して」という作業は、Antigravityが得意とする領域ですが、LovableはゼロからSaaS MVPを立ち上げることに最適化されているため、複雑なコードの読み書きは苦手です。
Antigravity が得意なこと
AntigravityはGoogleが開発したAI IDEです。Lovableと同じく「AIがコードを書く」ツールですが、こちらは既存のコードベースを深く理解しながら編集する設計になっています。
私が日常的に使う場面で最も差を感じるのは、リファクタリングとデバッグです。10ファイルにまたがる処理を「この型定義を変えて、影響する箇所を全部直して」と指示したとき、AntigravityはVS Code同等の言語サーバー情報を活用しながら変更を展開できます。Lovableにこの作業を頼もうとすると、まずコードをどこかにペーストして文脈を説明するところから始める必要があり、規模が大きいと精度が落ちます。
また、Antigravityはエージェントが複数のファイルを同時並行で処理できます。「このAPIエンドポイントを追加して、対応するテストも書いて、ドキュメントのREADMEも更新して」という依頼を1度で処理できる点は、個人開発の速度に直結します。
// Antigravity の典型的な使い方:既存コードに機能追加
// ターミナルで以下を実行すると、Antigravityがコードベースを解析して提案を出してくれる
// agents.json(簡略版)
{
"task": "Add rate limiting middleware to /api/auth/* routes",
"context": ["src/middleware/", "src/app/api/auth/"],
"constraints": [
"Use the existing Redis client in src/lib/redis.ts",
"Limit to 10 requests per minute per IP",
"Return 429 with Retry-After header when exceeded"
]
}
// Antigravityはsrc/middleware/rate-limit.ts を生成し、
// src/app/api/auth/[...nextauth]/route.ts に適用、
// src/lib/redis.ts の既存クライアントを再利用したコードを出してくれる実際に同じアプリを両方で作ってみた
検証として、シンプルなタスク管理SaaSを両ツールで作りました。要件は「ユーザー登録・ログイン・タスクのCRUD・チームへの招待機能」の4点です。
Lovable で作った場合: 初期の画面が出るまでが明確に速く、チャットを10往復ほどやり取りするだけでそれらしい見た目のアプリになりました。全体で2時間ほど。ただ、チーム招待のロジックが複雑になってきたあたりから生成品質が不安定になり、同じ指示を何度か繰り返す必要が出てきました。
Antigravity で作った場合: 最初にプロジェクト構成を作るのに少し手間がかかりましたが、一度軌道に乗ると速い。特に「認証ミドルウェアを全APIルートに適用する」「Supabase RLSのポリシーを正しく設定する」といったセキュリティ周りの実装で、Antigravityの方が明らかに信頼できる出力を出してくれました。全体で3時間ほどでしたが、最終的なコードの品質と理解度は高い状態で終わりました。
どちらが良いかではなく、Lovableは「早く画面を作って見せたい」とき、Antigravityは「本番に持っていけるコードを書きたい」とき、という使い分けが自然に生まれました。
価格と無料枠の比較
- Lovable: 無料プランあり(月5プロジェクトまで)。有料は月$25〜(チームプラン$50〜)
- Antigravity: Google AI Pro(月$19.99/約¥3,000)でGemini 1.5 Proを含む充実した枠。無料版はGemini 1.5 Flash
個人開発者として正直に言うと、費用対効果はAntigravityの方が高いと感じています。既存のGoogleアカウントに付随する形で使えるため、追加のサービス契約が増えない点も地味にありがたいです。
ツール選びの価格感覚については、Antigravity vs Cursor vs Bolt — アプリ作りで本当に効率が上がるのはどれかでも3ツールを横断して比較しているので、参考にしてみてください。
どちらを選ぶかの判断基準
使ってみて感じた選び方の軸を整理します。
Lovableが向いている場面:
- コーディング経験がなく、とにかく動くものを早く見たい
- スタートアップのMVPを1週間で作ってデモしたい
- デザイナーや非エンジニアのチームメンバーと一緒に画面を作りたい
- Gitやターミナルを使いたくない
Antigravityが向いている場面:
- 既存のコードベースを拡張・改修したい
- 本番運用を想定したセキュリティ・パフォーマンスが必要
- TypeScriptの型安全性を保ちながら開発したい
- 個人開発でアプリを長期的に育てていきたい
- Googleのエコシステム(Firebase・GCP・Gemini)と連携したい
一つだけ補足すると、「LovableとAntigravityを組み合わせる」という選択もあります。Lovableで画面の骨格を素早く作り、そのコードをGitHubにエクスポートしてAntigravityで本番品質に仕上げる、という流れは実際に試して有効でした。両方のいいとこ取りができます。
AIアプリ開発の選択肢が広がった時代に
Lovableの登場でAIアプリビルダーの選択肢が増えたことは、個人開発者にとってポジティブな変化だと思います。「どれを使うか」に正解はなく、作るものの性質と自分のスキルセットに合わせて使い分けるのが現実的な答えではないでしょうか。
まず試すなら、Lovableは無料で5プロジェクト作れるので気軽に始められます。Antigravityも無料プランがあります。両方を1週間ずつ使ってみて、自分の指でどちらのフィールが合うか確かめるのが一番だと思います。
AI IDEの全体像を整理したい方には、2026年版 AI IDE 選び方完全ガイドも参考になるかもしれません。