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◈ Agents & Manager/2026-06-01上級

並行エージェントのトークンコストを予算で抑える — 暴走を止めるバジェットガードの設計

複数のエージェントを並行で走らせると、トークン費は気づかないうちに膨らみます。トークンを減らす最適化ではなく、予算で消費を遮断するガバナンス層を Antigravity の並列エージェントに組み込む設計と実装を、運用で決めた閾値とともに共有します。

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ある朝、請求ダッシュボードを開いて、前月のトークン費が普段の3倍を超えていることに気づきました。原因はすぐには分かりませんでした。どのエージェントが、どのタスクで、どれだけ消費したのか、記録がどこにもなかったからです。並行で10本近いエージェントを夜間に走らせていて、そのうちの1本が想定外のループに入り、延々と巨大なコンテキストを投げ続けていたのでした。

夜間のバッチをエージェントに任せるようになったのは、記事の生成とリンク監査、それにアプリ側の定型作業を、個人開発のまま手作業で抱え続けるのが限界だったからです。並列で回すようになって、朝起きると終わっている、という状態は確かに手に入りました。けれど同時に、「気づいたら費用が膨らんでいる」という新しい種類の事故も抱え込むことになりました。手を動かす負担と引き換えに、目に見えない負担が増えたわけです。

その晩のジョブは、複数リポジトリの内部リンク監査をまとめて流すものでした。普段なら1時間ほどで、物音もなく終わっています。けれどその日は、1本のエージェントが監査の途中で「リンク先が見つからない→再探索→また見つからない」という小さなループに入り、毎回ほぼ全記事のインデックスをコンテキストに積み直していました。1回あたりの入力トークンが通常の数十倍に膨らみ、それが数百回繰り返されたのです。個人開発で全部を一人で見ている身からすると、こういう「静かに膨らむコスト」は、夜中に走っているぶんだけ気づくのが遅れます。

このノートは、その事故を二度と起こさないために組んだ「予算ガバナンス層」の設計と実装の記録です。トークン数を減らすチューニングの話ではありません。消費そのものを予算という単位で監視し、限度を超えたら自動で止める仕組みの話です。同じように複数エージェントを並行運用していて、コストの不透明さに不安を感じている方の参考になればと思います。

トークンを減らす最適化では止血にならない

最初に試したのは、プロンプトを短くする、コンテキストを圧縮する、安いモデルに寄せる、といった「トークンを減らす」方向の改善でした。これはこれで効果がありますし、やる価値はあります。実際、定型タスクのプロンプトを見直しただけで、1タスクあたりの平均消費は2割ほど落ちました。

ただ、これは平常時の単価を下げる話であって、暴走を止める話ではありません。私が遭遇した事故は「1本のエージェントが想定の50倍のトークンを使った」というものでした。単価を2割下げても、50倍の暴走が起きれば請求書は40倍に膨らみます。最適化は分母を小さくしますが、分子が跳ねたときの天井を作ってはくれません。

言い換えると、最適化は「平均」を良くする取り組みで、ガバナンスは「最悪」を抑える取り組みです。個人開発の予算は薄いので、月に一度の最悪が平均の改善を簡単に食い潰します。私が事故月に余計に払った金額は、その前後の最適化で何ヶ月もかけて節約したぶんを、たった一晩で上回りました。だから優先順位としては、まず天井を作り、そのあとで単価を下げる、という順番が正しいと考えています。

必要だったのは、平常時の節約ではなく、異常時の遮断でした。エンジニアリングでいえば、コードを速くするチューニングではなく、無限ループを検知して殺すウォッチドッグに相当するものです。この発想の切り替えが、設計の出発点になりました。

ガバナンスを三層で考える

整理してみると、コストを制御するという課題は、性質の違う三つの層に分かれていました。

最初の層は配分です。誰が、何に、どれだけ使ってよいかを事前に決める層です。タスクごと、エージェントごと、あるいは1回の実行全体に対して上限を割り当てます。配分がないと、後続の計測も遮断も基準を持てません。

二つ目の層は計測です。実際にどれだけ消費したかを、リアルタイムに近い粒度で積算する層です。事後の請求ダッシュボードでは遅すぎます。走っている最中に「いま累計いくら使ったか」が分からなければ、止める判断ができません。

三つ目の層は遮断です。配分した上限に対して、計測値が近づいた、あるいは超えたときに、実際に手を打つ層です。ここをいきなり「即停止」にすると、あと少しで終わるタスクまで殺してしまって本末転倒になります。だから縮退は段階的にします。

この三層を、Antigravity の並列エージェントに後付けで差し込めるよう、薄いラッパーとして実装していきます。以下のコードはそのまま動く TypeScript の最小実装です。

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