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Agents & Manager/2026-06-01上級

並行エージェントのトークンコストを予算で抑える — 暴走を止めるバジェットガードの設計

複数のエージェントを並行で走らせると、トークン費は気づかないうちに膨らみます。トークンを減らす最適化ではなく、予算で消費を遮断するガバナンス層を Antigravity の並列エージェントに組み込む設計と実装を、6サイト自律運営の実数値とともに共有します。

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ある朝、請求ダッシュボードを開いて、前月のトークン費が普段の3倍を超えていることに気づきました。原因はすぐには分かりませんでした。どのエージェントが、どのタスクで、どれだけ消費したのか、記録がどこにもなかったからです。並行で10本近いエージェントを夜間に走らせていて、そのうちの1本が想定外のループに入り、延々と巨大なコンテキストを投げ続けていたのでした。

廣川政樹です。2014年から個人開発で iOS / Android アプリを作り続けていて、累計5,000万DLの壁紙アプリ群と、Lab 4サイト・Blog 2サイトの合計6サイトを一人で運営しています。記事の生成やリンク監査、AdMob まわりの定型作業の多くを、Antigravity の並列エージェントに任せるようになってから、運用は確かに楽になりました。けれど同時に、「気づいたら費用が膨らんでいる」という新しい種類の事故も抱え込むことになりました。

その晩のジョブは、4サイトぶんの記事生成と、各サイトの内部リンク監査をまとめて流すものでした。普段なら1時間ほどで静かに終わります。けれどその日は、1本のエージェントが監査の途中で「リンク先が見つからない→再探索→また見つからない」という小さなループに入り、毎回ほぼ全記事のインデックスをコンテキストに積み直していました。1回あたりの入力トークンが通常の数十倍に膨らみ、それが数百回繰り返されたのです。個人開発で全部を一人で見ている身からすると、こういう「静かに膨らむコスト」は、夜中に走っているぶんだけ気づくのが遅れます。

このノートは、その事故を二度と起こさないために組んだ「予算ガバナンス層」の設計と実装の記録です。トークン数を減らすチューニングの話ではありません。消費そのものを予算という単位で監視し、限度を超えたら自動で止める仕組みの話です。同じように複数エージェントを並行運用していて、コストの不透明さに不安を感じている方の参考になればと思います。

トークンを減らす最適化では止血にならない

最初に試したのは、プロンプトを短くする、コンテキストを圧縮する、安いモデルに寄せる、といった「トークンを減らす」方向の改善でした。これはこれで効果がありますし、やる価値はあります。実際、定型タスクのプロンプトを見直しただけで、1タスクあたりの平均消費は2割ほど落ちました。

ただ、これは平常時の単価を下げる話であって、暴走を止める話ではありません。私が遭遇した事故は「1本のエージェントが想定の50倍のトークンを使った」というものでした。単価を2割下げても、50倍の暴走が起きれば請求書は40倍に膨らみます。最適化は分母を小さくしますが、分子が跳ねたときの天井を作ってはくれません。

言い換えると、最適化は「平均」を良くする取り組みで、ガバナンスは「最悪」を抑える取り組みです。個人開発の予算は薄いので、月に一度の最悪が平均の改善を簡単に食い潰します。私が事故月に余計に払った金額は、その前後の最適化で何ヶ月もかけて節約したぶんを、たった一晩で上回りました。だから優先順位としては、まず天井を作り、そのあとで単価を下げる、という順番が正しいと考えています。

必要だったのは、平常時の節約ではなく、異常時の遮断でした。エンジニアリングでいえば、コードを速くするチューニングではなく、無限ループを検知して殺すウォッチドッグに相当するものです。この発想の切り替えが、設計の出発点になりました。

ガバナンスを三層で考える

整理してみると、コストを制御するという課題は、性質の違う三つの層に分かれていました。

最初の層は配分です。誰が、何に、どれだけ使ってよいかを事前に決める層です。タスクごと、エージェントごと、あるいは1回の実行全体に対して上限を割り当てます。配分がないと、後続の計測も遮断も基準を持てません。

二つ目の層は計測です。実際にどれだけ消費したかを、リアルタイムに近い粒度で積算する層です。事後の請求ダッシュボードでは遅すぎます。走っている最中に「いま累計いくら使ったか」が分からなければ、止める判断ができません。

三つ目の層は遮断です。配分した上限に対して、計測値が近づいた、あるいは超えたときに、実際に手を打つ層です。ここをいきなり「即停止」にすると、あと少しで終わるタスクまで殺してしまって本末転倒になります。だから縮退は段階的にします。

この三層を、Antigravity の並列エージェントに後付けで差し込めるよう、薄いラッパーとして実装していきます。以下のコードはそのまま動く TypeScript の最小実装です。

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ハードキャップ超過時にモデル降格→停止と段階的に縮退させる BudgetGuard の設計と、本番で踏んだ落とし穴を学べます
6サイトを並行自律運営する中で月のトークン費を約3.2倍から元の水準へ戻した、予算ガバナンスの運用ルールが分かります
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