Windsurf が Cognition に買収されたというニュースを見たとき、正直なところ「では自分は Antigravity を選び続けていいのだろうか」と一度立ち止まりました。個人開発で毎日触っている道具だからこそ、乗り換えの判断は軽く下せません。
この記事は、両方を実際に触ってきた個人開発者としての比較です。スペック表の優劣ではなく「どちらを日々の主軸に据えるか」という視点でまとめました。結論から書くと、私は今も Antigravity を主軸に、Windsurf を特定の場面だけ併用しています。その理由を、機能・料金・エージェント設計の順にお伝えします。
そして、書き直すにあたって一つ棚卸しをしました。以前のこの記事には、メモリ使用量や起動時間の数字、独自 SDK のコード例など、手元で確かめていない記述が混じっていたのです。今回、それらは取り除くか、確認できた範囲の言葉に置き換えております。
全体像 — 二つの哲学
どちらもコード補完、エージェント実行、統合開発環境を備えた AI IDE です。違いは、エージェントにどこまで任せるかの哲学にあります。
Antigravity は、実行前に計画を見せるプランモードと、AGENTS.md による指示の明文化を軸にしています。Windsurf は、Cognition の傘下で、エージェントに広く委譲する自律実行を前面に出しています。
両者の違いは、機能の有無というより「止める手段をどこに置くか」にあります。Antigravity は実行前に止める設計で、Windsurf は実行後に差し戻す設計です。この違いが、日々の使い心地を決めています。
機能比較
細かな機能は両者とも急速に変わるため、数値で優劣をつけず、設計の方向だけを表にしました。
| 観点 | Antigravity | Windsurf |
|---|---|---|
| エージェントの止め方 | プランモードで実行前に計画を確認 | 自律実行し、結果を見て差し戻す |
| 指示の置き場所 | AGENTS.md などのプロジェクト内ファイル | ルールファイル・メモリ機能 |
| 外部ツール連携 | MCP サーバー(ローカル・リモート) | MCP 対応 |
| 複数エージェント | 並列実行の枠を自分で配分する設計 | タスクごとの自動振り分けが中心 |
| 試し始めやすさ | 無料で試せる枠あり(上限は変動) | 無料枠あり(クレジット制) |
料金 — 数字より「枠の仕組み」を見る
料金は改定が続いており、本記事の数字も数か月で古くなります。金額を暗記するより、枠がどう減っていくかを把握しておくほうが、乗り換え判断では役に立ちました。
Windsurf については、2026 年 7 月時点の第三者の料金解説(JetAdmin)で、Free が月 $0(25 クレジット)、Pro が月 $20(500 クレジット)、Teams が 1 ユーザー月 $40、Enterprise が同 $60 と整理されていました。同じ解説によると、2026 年 3 月以降は月間のクレジットを一括で使う形ではなく、日次・週次で使用量が更新される方式に変わっています。
Antigravity については、利用枠が Google AI のサブスクリプションに結びつく形です。Pro は月 $20 で、報道では Ultra は月 $249.99 とされていました(DevClass、2026 年 3 月)。その後、より安い Ultra 枠が登場した経緯は、別記事の損益分岐の計算にまとめています。
- Antigravity の枠の見方 — Ultra $100 プランの損益分岐
- 枠が尽きたときの設計 — クォータ逼迫時の段階的フォールバック
最新の金額は、必ず各社の公式料金ページでご確認ください。上の数字は、あくまで私が記事を更新した時点で確認できたものです。
エージェント設計の違い
Antigravity — 計画を先に見る
プランモードでは、エージェントが「何をするか」を先に提示します。私はこの段階で、危ないステップ(本番設定の書き換えや依存関係の更新)だけを止めています。詳しい使い分けはプランモードと高速モードの実践ガイドに書きました。
指示の明文化には AGENTS.md を使います。反映されないときの原因はAGENTS.md が効かないときの確認手順にまとめています。
Windsurf — 任せて、結果で判断する
Windsurf は、エラーの切り分けからコマンド実行、修正の適用までをまとめて走らせる設計です。独立した作業なら、確認を挟まないぶん速く終わります。
一方で、実行後に差し戻す前提なので、影響範囲が広い作業ではバージョン管理の履歴が命綱になります。作業前にブランチを切る習慣は、どちらのツールでも変わりません。
MCP と複数エージェント
どちらも MCP で外部ツールにつなげます。ただし、設定の置き場所はツールごとに別です。乗り換えの際に MCP の設定が自動では引き継がれない点は、私が一度つまずいたところでした。Antigravity 側の注意点は2 アプリ間で MCP 設定が共有されない問題にまとめています。
複数エージェントを並列で走らせるときは、速さよりも「枠をどう配分するか」が先に効いてきます。並列エージェントのクォータ配分設計で、私が使っている考え方を書き残しました。
乗り換えるときに見ておくこと
- Git の履歴は両方で共通です。作業ブランチごと持ち越せます
- MCP の設定は、移行先で書き直しが必要になることがあります
- プロジェクトの指示ファイルは、置き場所と書式が異なるので、読み替えが必要です
- 独自に作った自動化は、移行先の仕様に合わせた作り直しになります
移行にかかる時間は、プロジェクトの複雑さ次第です。私は半日ほど見込み、まず小さなリポジトリで試すようにしています。
個人開発者としての使い分け — 私はこう決めています
ここまでは一般的な比較でしたので、実際に両方を触ってきて、私自身がどう選んでいるかをお伝えします。
私は個人で複数のサービスを運用していて、新しいコードを書く時間よりも「壊さずに保守する時間」のほうが長いタイプです。その前提だと、エージェントに任せる範囲をこちらが握れるかどうかが最優先になります。
Antigravity を主軸にしている一番の理由は、プランモードで「何をするか」を先に見せてくれることです。エージェントが実行する前に意図を確認できるので、任せきりにせず、危ないステップだけを止められます。個人開発では、暴走した1回の自動修正がそのまま本番に乗ってしまう怖さがあるので、この一手間が効きます。
一方で Windsurf を併用するのは、独立した使い捨てのタスクのときです。「このディレクトリの TypeScript エラーを全部潰して」のような、失敗しても影響が閉じている作業は、自律実行に投げてしまうほうが速いのです。ここでは確認の一手間がかえって邪魔になります。
最初のうちは、すべての作業を一つのツールに寄せようとしすぎました。結果は芳しくありませんでした。安全に任せたい作業まで自律実行に投げて差し戻しに追われ、逆に使い捨ての作業までプランの確認に時間を使っていたのです。気づいたのは、手戻りの時間を数えてからでした。
握りたい作業は計画を先に見るほうへ、投げたい作業は結果で判断するほうへ。 道具を選ぶ前に、作業の性質を先に分けるようにしています。これが、いまの私の線引きです。
作業ごとの仕分けを、短い表で残しておく
迷ったときのために、私は次のような小さな判断表を手元に置いています。
| 問い | 「はい」なら |
|---|---|
| 失敗したとき、影響がこのディレクトリの外に出ますか | 計画を先に見るツール(Antigravity のプランモード) |
| 本番の設定や課金に触れますか | 計画を先に見るツール |
| git で一発で戻せる、閉じた作業ですか | 自律実行に投げる(Windsurf など) |
| 同じ作業を何度も繰り返しますか | 指示ファイルに手順を書いてから投げる |
最終的な判断
- コントロールと試しやすさを重視する個人開発: Antigravity
- 自律性とチーム向けの管理機能を重視する場面: Windsurf
- 両方を作業の性質で持ち替える運用: 私はこれに落ち着きました
どちらも優れたツールで、優劣というより性格の違いです。迷ったときは、機能表を眺める前に「この作業は、失敗したら誰が困るか」を先に考えていただくと、選びやすくなります。
まずは、いつも触っているリポジトリでブランチを切り、プランモードで小さな修正を一つ任せてみてください。何を握らせ、何を投げるかの感覚が、その一回でつかめるはずです。お読みいただきありがとうございました。