Antigravity の 4 月後半から 5 月初頭にかけてのアップデートは、ぱっと見地味ですが、開発者の作業フローに直接影響する重要な変更が複数含まれています。私が実機で動かして「これは確実に普段使いに効く」と判断した 3 つの変更を、手元の挙動付きで整理します。
リリースノートを上から順番に紹介する形式ではなく、「実装してみて初めて気づく差分」だけに絞ります。広報的な文言と実際の挙動には毎回ギャップがあるので、現場の感覚での補足が記事の主目的です。
注目アップデート 1: Unreal Engine 5 との直接連携
5 月に入ってから、Antigravity に UE5 プロジェクトを直接読ませた際の挙動が変わりました。具体的には、.uproject を含むディレクトリを開いた際に、Antigravity 側がブループリントとコードの参照関係を整理した状態で読み込んでくれるようになっています。
これまでは UE5 プロジェクトを Antigravity に渡すと、C++ ソースとブループリントの関係がツール側で見切れず、片方を編集するともう片方との整合が取れない問題がありました。今回のアップデート以降は、.uasset の参照グラフを Antigravity が把握しているため、「ブループリントに依存している関数を C++ 側で消したらどう影響するか」を聞いても適切に回答してくれるようになっています。
私が試したのは、Third Person テンプレートで生成したプロジェクトに、カスタムの AI 行動ツリーを追加する作業です。「BTService の追加 → ブループリント側からの参照確認 → エディタで動作テスト」までを Antigravity と対話しながら 30 分ほどで終えられました。以前の挙動だとここは 1〜2 時間はかかっていた印象なので、UE5 開発者にとっては待ち望んだ変更です。
注目アップデート 2: A2A プロトコル対応
Agent-to-Agent (A2A) プロトコルへの対応は、外部のエージェントと Antigravity の内部エージェントを連動させる際の事故を激減させました。これまで非対応エージェントを呼び出すと、ツール呼び出しの引数フォーマットが噛み合わずにループするケースが頻発していたのですが、A2A 経由になってからは初回の呼び出しからほぼ落ちません。
具体的には、外部の MCP サーバーや別ベンダーの AI エージェントを Antigravity から呼ぶ際の安定性が変わります。私が普段使っているデバッグ用エージェント(手元で書いた Slack 通知用の小さなサーバー)を Antigravity から呼び出す処理が、これまで 5 回に 1 回はリトライ必須だったものが、現状ほぼ 100% 一発で通るようになりました。
A2A 対応の確認は、Antigravity の設定画面の「Integrations」タブから行えます。A2A Protocol Support が Enabled になっていれば、対応済みのエージェントは自動的にこの経路を使います。
# A2A対応エージェント側の最低限の起動例
# (擬似コード — 自分で書く小型エージェントの構成イメージ)
node ./agents/notify-agent.js \
--protocol a2a \
--port 7878 \
--name slack-notify注目アップデート 3: AgentKit 2.0 のサブエージェント分割改善
AgentKit 2.0 自体は 4 月にリリース済みでしたが、5 月に入ってサブエージェント分割のロジックがアップデートされました。具体的には、依頼内容のサイズが一定以上になった場合の自動分割の判定が、これまでは「ファイル数」中心だったものが、「変更の独立性」を加味する形に変わっています。
以前は 30 ファイルを超えると機械的に並列化していたのが、依存関係を読んで「並列にしても意味がない(同じファイルを連続編集する系統の作業)」と判断したケースは単一エージェントで処理するようになりました。これは実利として、無駄なエージェント起動コストが減ることに直結します。
体感では、私の中規模プロジェクト(ファイル数 80〜120)での AgentKit 経由の作業時間が、4 月から 5 月にかけて 15〜20% 短縮されました。これは並列化の判定が賢くなったことに加え、不要な統合フェーズが減ったことが効いている印象です。
既知の問題と回避策
5 月のアップデート群には、いくつか手元で確認した小さな引っかかりもあります。
第 1 に、UE5 連携初回のインデックス作成時に、プロジェクトサイズが大きい(10GB 超)と Antigravity がフリーズに見える状態が 5〜10 分続くことがあります。これは内部でアセット参照グラフを構築している時間で、待てば解決します。タスクマネージャで CPU 使用率が動いていれば正常です。
第 2 に、A2A 対応エージェントの初回呼び出し時、ハンドシェイクが TLS 設定の影響で失敗する場合があります。エージェント側を --protocol a2a-insecure で立ち上げ直すと回避できますが、本番では使わないでください。
第 3 に、AgentKit 2.0 の分割ロジック更新後、.gitignore に含まれるはずのファイル(node_modules や .next など)が一時的にエージェントの作業対象に巻き込まれるケースを 1 度だけ確認しました。.aignore ファイルに明示することで回避できます。
# .aignore の例
node_modules/
.next/
dist/
build/
どれから試すべきか
UE5 を触っている人は迷わず連携機能から。それ以外の方は AgentKit 2.0 の改善が一番効きやすいので、普段使っている中規模プロジェクトで試すのが現実的です。A2A は外部エージェントと連携している人だけが恩恵を受けるため、後回しでも問題ありません。
次のアクション
明日からできることは、自分が普段触っている Antigravity プロジェクトに .aignore を追加することです。AgentKit 2.0 の分割ロジック改善を最大限に活かす最小投資で、所要時間は 5 分です。これだけでエージェントの動きが体感で軽くなります。