Antigravityを使い始めると多くの開発者が直面する疑問があります。「Planning ModeとFast Mode、どちらを使えばいいの?」
この選択は単なる速度の問題ではありません。コスト、精度、タスクの性質によって最適な選択は変わります。ここでは両モードの仕組みを理解した上で、実践的な使い分けのルールを解説します。
Planning Mode と Fast Mode の根本的な違い
Antigravityの2つのモードは、内部でどのAIモデルを使うかが異なります。
**Planning Mode(計画モード)**はGemini 2.5 Pro(またはClaude Opus 4.6)を使用します。複雑な問題を多段階で推論し、実行前に「計画」を立ててから作業を行います。
**Fast Mode(高速モード)**はGemini 2.5 Flash(またはClaude Haiku 4.5)を使用します。推論を最小限に抑えて高速に応答します。
Planning Mode
─────────────────────────────────────────────
入力 → 問題分析 → 計画立案 → 実行 → 検証
↑複数ステップの推論
↑コンテキスト全体の理解
↑副作用の予測
Fast Mode
─────────────────────────────────────────────
入力 → 直接実行
(推論を省略して高速応答)
実際の速度・コスト・品質の目安は次の通りです。
指標 Planning Mode Fast Mode
─────────────────────────────────────────
応答速度 5〜15秒 0.5〜3秒
APIコスト ★★★★★ ★★
精度(複雑) ★★★★★ ★★★
精度(単純) ★★★★ ★★★★★
Planning Mode が向いているタスク
Planning Modeの真価が発揮されるのは「考えてから行動する必要があるタスク」です。
1. 新機能の設計・実装
# Planning Mode を使うべき場面の例
「ユーザー認証システムを実装して。
要件:
- JWT + Refresh Token
- ソーシャルログイン(Google・GitHub)
- レート制限
- 監査ログ」
# Planning Modeが行うこと:
# 1. 要件を分析して依存関係を整理
# 2. ファイル構成を設計
# 3. 実装順序を決定(認証基盤 → JWT → ソーシャル → 制限)
# 4. 各ステップを順番に実装
# 5. 統合テストを追加
2. 大規模リファクタリング
複数ファイルにまたがる変更は Planning Mode が明確に有利です。
# この種のリファクタリングは Planning Mode を使う
antigravity --mode=planning \
"src/ 以下の全てのAPIクライアントコードを
fetch() から axios に移行して。
エラーハンドリングパターンも統一すること"
# Planning Mode は:
# - まず全ファイルをスキャン
# - 影響範囲を分析
# - 変更計画を作成
# - バッチで安全に変更
# - テストを実行して確認3. バグの原因調査(根本原因分析)
# 症状だけを伝えてPlanning Modeに任せる
「本番環境でユーザーがログインできないという報告がある。
エラーログ: [JWT_INVALID_SIGNATURE at /api/auth/verify]
原因を調査して修正して」
# Planning Modeが行うこと:
# 1. エラーログのパターンを分析
# 2. 関連するコードを追跡
# 3. 環境変数・設定ファイルを確認
# 4. 仮説を立てて検証
# 5. 最小限の修正を提案
Fast Mode が向いているタスク
Fast Modeは「答えが明確で、考える必要がないタスク」で輝きます。
1. 繰り返しの定型作業
# Fast Mode で一括処理
# "このファイルの全ての console.log を logger.debug に置換して"
# → Fast Mode が即座に実行(考える必要なし)
# 変換前
console.log("User logged in:", userId);
console.log("Request received:", req.method, req.path);
# 変換後(Fast Modeが瞬時に処理)
logger.debug("User logged in:", userId);
logger.debug("Request received:", req.method, req.path);2. コードフォーマット・Lint修正
# Fast Mode 向けタスク
antigravity --mode=fast "ESLint エラーを全て修正して"
antigravity --mode=fast "TypeScriptのimportを整理して"
antigravity --mode=fast "コードのインデントを統一して"3. テストの自動補完
既存の関数に対して機械的にテストを追加する場合はFast Modeで十分です。
// Fast Mode: "この関数のユニットテストを書いて"
function add(a: number, b: number): number {
return a + b;
}
// Fast Modeが即座に生成:
describe("add", () => {
it("正の数を足す", () => {
expect(add(1, 2)).toBe(3);
});
it("負の数を足す", () => {
expect(add(-1, -2)).toBe(-3);
});
it("ゼロを足す", () => {
expect(add(0, 5)).toBe(5);
});
});4. ドキュメント・コメントの追加
# Fast Mode で高速生成
antigravity --mode=fast "src/utils/ 以下の全関数にJSDocコメントを追加して"設定ファイルでのデフォルトモード設定
毎回モードを指定するのが面倒な場合、AGENTS.md でタスクタイプ別のデフォルトを設定できます。
# AGENTS.md
## Antigravity Configuration
### Default Mode Settings
- **New feature development**: Always use Planning Mode
- Reason: Architecture decisions require careful consideration
- **Bug fixes**: Planning Mode for unknown bugs, Fast Mode for obvious typos/formatting
- **Refactoring**: Planning Mode for multi-file changes, Fast Mode for single-file
- **Test generation**: Fast Mode (mechanical task)
- **Documentation**: Fast Mode (straightforward generation)
### Cost Management
- Daily Planning Mode budget: 50 requests
- Fast Mode: Unlimited
- Alert when Planning Mode requests exceed 30/dayリアルタイムでのモード切り替え
作業中にモードを切り替える実践的なパターンです。
# 最初はPlanning Modeで設計
antigravity --mode=planning "EC サイトのカート機能を設計して実装して"
# → Planning Modeが設計を作成
# 設計が決まったらFast Modeで細部を詰める
antigravity --mode=fast "カートコンポーネントにloadingスタイルを追加して"
antigravity --mode=fast "エラーメッセージを日本語に翻訳して"コストを意識した現実的なワークフロー
チームで使う場合のコスト管理戦略です。
Antigravity の使い方と料金 でも解説していますが、Planning Modeは Fast Mode の約5〜10倍のコストがかかります。
# コスト試算(参考)
tasks_per_day = {
"planning_mode": 20, # 設計・バグ調査・複雑な実装
"fast_mode": 100 # フォーマット・テスト・ドキュメント
}
# 月次コスト(概算)
planning_cost = 20 * 22 * 0.05 # $22/月(仮定単価)
fast_cost = 100 * 22 * 0.005 # $11/月(仮定単価)
total = planning_cost + fast_cost # $33/月AgentKit 2.0 の実践ガイド と組み合わせて、Planning Modeを「オーケストレーター」として使い、実際の作業はFast Modeのサブエージェントに任せるアーキテクチャも効果的です。
よくある失敗パターンと解決策
❌ 失敗: 全てのタスクにPlanning Modeを使う
→ 問題: コストが膨らみ、単純なタスクでも遅い
→ 解決: Fast Modeで問題ない単純作業を分類して使い分ける
❌ 失敗: 全てのタスクにFast Modeを使う
→ 問題: 複雑なリファクタリングで一貫性のない変更が生まれる
→ 解決: 複数ファイルにまたがる変更は必ずPlanning Modeを使う
❌ 失敗: バグ調査にFast Modeを使う
→ 問題: 表面的な修正しか行われず根本原因が残る
→ 解決: 原因不明のバグは必ずPlanning Modeで調査する
全体を振り返って
Planning ModeとFast Modeの使い分けは、Antigravityを効率的に活用するための最も重要なスキルの一つです。
シンプルなルールとしては「複数ファイルにまたがる・原因が不明・設計が必要なタスク」はPlanning Mode、「単一ファイル・答えが明確・繰り返し作業」はFast Modeと覚えてください。
このルールを意識するだけで、コストを抑えながら開発速度を大幅に向上させることができます。
個人開発12年の現場で実感したこと
線引きするときの3つの判断軸
- 失敗時の影響が金銭やユーザー体験にどれだけ波及するか
- 復旧オペレーションが明文化されているか
- 観測ログから人間が再現できる粒度に整っているか