2014年から個人開発でアプリを公開していて、累計5,000万ダウンロードを超えた壁紙アプリ群の保守を1人で続けています。Microsoft が 2026年5月28日に Copilot Studio の Computer-Using Agent(コンピューターを操作するエージェント)を一般提供にしたという発表があり、ちょうど私が Claude in Chrome で AdMob と Crashlytics を毎朝点検している運用と重なるテーマなので、両者を並べて整理してみます。
一般提供されたもの
Microsoft の発表によると、Copilot Studio の Computer-Using Agent は、組織が UI を介して Web サイトやデスクトップアプリと直接やり取りできるエージェントを構築する機能です。基盤システムに API がなく、これまで脆弱なスクリプトや手動回避策に頼っていた業務を自動化する位置づけになっています。
今回の一般提供で同時に出たアップデートのうち、運用面で目を引いたのは以下の点でした。
- 認証情報をより安全に管理する仕組み
- 画面や Web ページが変わってもとまらない、適応性のある自動化
- マルチステップワークフローへの組み込み(API ベースのアクションや承認と同居)
- オーケストレーションレイヤーが新しくなり、評価性能が約20%向上、トークン消費が50%削減
UI が変わっても止まらないという話は、個人開発で AdMob や Crashlytics の管理画面を AI に触らせている立場から見ると、一番重要なポイントです。AdMob のダッシュボードは半年に1回ほど大きなレイアウト変更があり、その都度スクリプトを書き直していた時期がありました。
私が Claude in Chrome に任せている作業
私が Browser 拡張で動く Claude in Chrome に毎朝任せているのは、ざっと以下の流れです。
- AdMob の前日収益、eCPM、fill rate を6アプリぶん横断で読み上げる
- Crashlytics で前日新規発生したクラッシュを Crash-free users 99.7% を下回るものから順に挙げる
- AdMob のメディエーション設定で、新しい Ad Network(Liftoff・Unity Ads・InMobi)が正しく有効になっているか確認する
- App Store Connect と Google Play Console の前日インストール数を地域別に拾う
これらは全部、API がないか、あっても個人開発者の規模では使う意味が薄い管理画面の集まりです。AdMob には Admob API がありますが、メディエーションウォーターフォール周りは UI でしか触れない設定が多く、Crashlytics の場合は新規クラッシュの絞り込みやスタックトレース閲覧が結局 UI 経由になります。
Computer-Using Agent と Claude in Chrome は、扱う問題が見事に重なっています。
どちらに何を任せるかの整理
Copilot Studio の方は、企業の業務プロセスを念頭にローコード・ノーコードで複数のエージェントとワークフローを組み合わせる前提です。Work IQ という相互運用性のレイヤーが入って、エージェントどうしや API、外部ツールの連携が前提になっています。
Claude in Chrome の方は、私のような個人開発者がブラウザに常駐させて、その場で1つの管理画面を触らせるという使い方が中心です。会話的な指示に対して、その場でクリックや入力を実行してくれる粒度です。
私の感覚で並べると、こうなります。
| 観点 | Copilot Studio Computer-Using Agent | Claude in Chrome |
|---|---|---|
| 対象規模 | 企業の業務オートメーション | 個人開発者の日常運用 |
| 認証情報の管理 | エンタープライズ向け仕組みが組み込み | Chrome のセッションに乗る |
| 適応性 | UI 変更に耐える設計が新しく入った | 政樹側でプロンプトを書き直して追随 |
| 統合先 | API/承認/ビジネスロジックと同居 | ブラウザ上の単発操作中心 |
| 失敗時の挙動 | ワークフロー内で承認ステップに戻せる | チャットで止まり、私が手で介入 |
「単発の管理画面オペレーションを毎朝5分でやりたい」だけなら、後者の Claude in Chrome で十分です。「請求書発行 → ERP 反映 → 承認 → 顧客通知」のようにステップが複数あり、途中で人間の承認が挟まる業務は、Computer-Using Agent + Workflows の方が筋がよさそうに見えました。
UI 変更で止まらない設計をどう作るか
Computer-Using Agent の今回の目玉のひとつは「画面が変わってもとまらない自動化」です。これは AdMob と Crashlytics を毎日触る側の人間として、一番気になる箇所でした。
Claude in Chrome で同じ目的に近づけるためにやっている工夫を、いくつか書いておきます。
- 要素特定をテキストベースに寄せる — "Show ad units" のような可視テキストやスクリーンリーダー向けのラベルを手がかりに指示する。CSS セレクタや座標は基本的に指定しない
- 遷移後の確認を必ず挟む — クリック後に「いまどの画面にいるか」を私から質問させ、想定外なら直前の操作に戻る
- ステップを短く区切る — 1プロンプトで5ステップ以上やらせると、失敗時の切り戻しが大変。3ステップ単位で点検する
- 読み取りと書き込みを別タスクにする — 「今日の収益を教えて」は読み取り専用、「メディエーション設定を変更する」は明示的に別タスクとして起動する
Copilot Studio 側はこのあたりをプラットフォーム側で吸収する方向に進んでいる印象で、Computer-Using Agent のオーケストレーションレイヤーが新しくなり、評価性能が約20%向上したという数字も、UI 変化への耐性改善が大きいのではないかと推測しています。
個人開発で UI 自動化を維持するときの注意点
ここ半年ほど Claude in Chrome で AdMob を触り続けて、いくつかハマりどころが見えてきました。
ひとつめは、認証情報の扱いです。AdMob の操作には Google アカウントのセッションが必要なので、Claude in Chrome はそのセッションに乗ります。共有プロファイルではなく、AdMob 専用のブラウザプロファイルを作って、そこに Claude in Chrome を住まわせるのが安全でした。これは Copilot Studio がエンタープライズ向けに認証情報管理を強化したのと、本質的に同じ問題意識です。
ふたつめは、レート制限です。AdMob のダッシュボードは短時間に大量のクエリを投げると一時的に応答が遅くなり、その状態で Claude in Chrome がリトライを繰り返すとセッション側で異常検知に引っかかります。私は1操作あたり最低3秒のディレイをプロンプトに明記しています。
みっつめは、結果の検証です。AdMob で「メディエーショングループに Liftoff を追加した」と Claude in Chrome が言ってきても、本当に追加されているかは別タブで開いて目視で確認します。ここは Copilot Studio の承認ステップに相当する人間ゲートで、個人開発でも省略はしないと決めています。
音声インタラクションとリアルタイム性
今回の Copilot Studio アップデートには、Dynamics 365 Contact Center 経由でリアルタイム音声エージェントを北米で一般提供する話も含まれていました。発信者の識別、質問対応、必要に応じた人間オペレーターへの引き継ぎを音声で扱う構成です。
個人開発の現場では、音声エージェントはまだ運用に組み込めていません。ただ、アプリのユーザーレビューに対する返信作業は、4アプリ × 主要6カ国分 = App Store だけで72件の代理返信を1セッションで処理した経験があり、ここはテキスト → 音声 → 翻訳の流れで音声エージェントを差し挟む価値があるかもしれない、と感じています。
Microsoft が音声インタラクションをコンタクトセンター向けに一般提供したのは、エンタープライズの問い合わせ業務の体験を変える狙いがあるのだろうと推測しています。個人開発者でも、レビュー返信や問い合わせ対応をどこから音声化するかは、考えておく価値のあるテーマです。
選び方の現実的な目安
Copilot Studio と Claude in Chrome のどちらを選ぶかは、扱う業務の規模と、ステップ間に承認が必要かどうかでだいたい決まります。私の中では、次の3つの軸で考えています。
- 承認や監査ログが必要か — 必要なら Copilot Studio + Workflows、個人で完結するなら Claude in Chrome
- 複数の人間が同じワークフローを実行するか — 共有運用なら Copilot Studio、自分一人で済むなら Claude in Chrome
- オーケストレーションの中央集約が要るか — エージェントノードや承認をワークフロー上で一望したいなら Copilot Studio、単発の操作だけで足りるなら Claude in Chrome
個人開発者の私は、当面は Claude in Chrome を主軸に置きつつ、Stripe メンバーシップ周りや Apple/Google からの通知メールを横串で扱う必要が出てきたら、Copilot Studio に切り替えるかもしれません。
並べてみてわかったこと
Microsoft Copilot Studio の Computer-Using Agent 一般提供は、企業向けの大きな出来事ですが、個人開発者にとっても「API のない管理画面を AI に運用させる」というテーマが業界全体で本気で取り組まれている、という追い風として読めます。
私が Claude in Chrome で AdMob と Crashlytics を毎朝点検している運用は、規模こそ違えど、Copilot Studio が向き合っている課題と同じ系列にあります。UI 変更への耐性、認証情報の扱い、結果検証、人間ゲート — どれもエンタープライズと個人開発で共通する論点でした。
明日から AdMob のメディエーション設定を Liftoff・Unity Ads・InMobi の3社追加するタスクに入ります。Claude in Chrome を使いつつ、Copilot Studio 側の動きを横目で見ながら、自分の運用に取り込めるノウハウを少しずつ拾っていく予定です。