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Editor View/2026-05-03上級

Gemini CLI と Antigravity を本気で使い分ける — 2026年5月、現場で出した結論

Gemini CLI と Antigravity を半年並行運用してきた個人開発の現場から、ターミナル派とIDE派それぞれの本領を、実例コード・コスト比較・判断フレームワークで具体的に整理します。

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「Gemini CLI で十分じゃない?」「いや Antigravity の体験は別物だよ」— 個人開発者の集まりで、この種の言い合いを何度聞いたかわかりません。私自身、半年ほど両方を本気で並行運用してきて、最近ようやく自分なりの結論にたどり着きました。先に言ってしまうと、答えは「どちらか一方を選ぶ」ではなく「作業の粒度に応じて住み分ける」です。ただし、その住み分けには明確な軸があります。

この記事は、両者の機能を網羅的に並べる比較記事ではありません。実際にいくつかのプロダクトを Gemini CLI と Antigravity で同時並行に開発してきた手応えと、思わぬところで詰まったコスト・運用上の問題、そして今は固まりつつある判断フレームワークを共有する記事です。同じように二刀流でいきたいけれど、頭の中が整理できていない方の参考になれば嬉しいです。

「使い分ける」ためにまず押さえる3つの軸

両者を比べるとき、機能リストを並べてもあまり意味がありません。同じ「コードを書く」用途でも、ツールの設計思想が違うと使いどころも変わります。私が最終的に重視している軸は3つに絞れました。

軸1: 操作の単位が「コマンド」か「セッション」か

Gemini CLI は基本的に「1コマンド = 1タスク」で完結する設計です。gemini -p "このログをサマライズして" のように、入力と出力が1対1で対応します。状態を持たないため、シェルパイプラインや Makefile、シェルスクリプトに自然に組み込めます。

一方の Antigravity は「セッション内で複数のステップを行き来する」前提で作られています。ファイルを開き、コードを編集し、エージェントに指示を出し、結果を見て次の指示を考える、という流れが滑らかに繋がります。

この違いが意外と侮れません。「ログを 1 回要約してほしい」だけなら Gemini CLI のほうが明確に早く、「コードベースを理解しながら段階的にリファクタする」なら Antigravity のほうが明確に速いです。

軸2: コンテキストの「持ち方」

Gemini CLI のコンテキストは、毎回明示的に渡すのが基本です。@file.ts @docs/spec.md のように @ 記法でファイルを添付するか、stdin でパイプ経由で渡します。これは透明で予測可能な反面、長く付き合う「育てるコンテキスト」には向きません。

Antigravity は IDE のワークスペース全体が暗黙のコンテキストになります。エージェントは関連ファイルを自動的に探索し、.agentrulesAGENTS.md で永続的なルールを学習できます。便利ですが、何が読まれているかブラックボックスになりやすく、デバッグ時に困ります。

軸3: エージェントの「粒度」

Gemini CLI のエージェントは、ほぼ「単発の関数呼び出し」です。長時間動かすことを想定していません。一方 Antigravity のエージェントは「Manager Surface で監視しながら時間をかけて動かす」前提です。

この違いを無視して両者を取り違えると、CLI で長時間タスクを走らせてセッションがタイムアウトしたり、Antigravity でワンライナー的な質問をしてセッション切替のオーバーヘッドだけ取られたりします。

ターミナル前提のタスクは Gemini CLI が依然として強い

私が「これは CLI 一択」と即断するパターンを、実際の使用例で示します。

例1: コミットフックでの差分レビュー

.git/hooks/pre-commit に組み込んでステージ済みの差分を機械的にレビューさせるユースケースです。Antigravity ではこの処理を IDE の外で完結させるのが難しいですが、Gemini CLI なら自然に書けます。

#!/usr/bin/env bash
# .git/hooks/pre-commit
# ステージされた diff を Gemini CLI で軽量レビュー。重大な問題のみ commit を止める。
 
set -euo pipefail
 
DIFF="$(git diff --cached --diff-algorithm=minimal)"
if [ -z "$DIFF" ]; then
  exit 0
fi
 
# 100 行未満なら時間の無駄なのでスキップ
LINES=$(echo "$DIFF" | wc -l)
if [ "$LINES" -lt 100 ]; then
  exit 0
fi
 
REVIEW=$(echo "$DIFF" | gemini -p "次の差分を 'BLOCK:'(重大な問題)または 'OK' のいずれかで判定してください。理由は1行で。" 2>/dev/null || echo "OK CLI 利用不可")
 
if [[ "$REVIEW" == BLOCK:* ]]; then
  echo "❌ Gemini レビューが commit をブロックしました:"
  echo "$REVIEW"
  exit 1
fi
 
echo "✅ Gemini レビュー: $REVIEW"
exit 0

期待する動作は、差分が 100 行未満なら何もせず通過し、100 行以上なら Gemini に判定させ、BLOCK: プレフィックスのときだけコミットを止めることです。|| echo "OK CLI 利用不可" のフォールバックで、ネットワーク切断時にも開発を止めない設計にしているのがポイントです。**「AI を介在させたいけれど、AI が落ちたときに作業が止まる設計はしたくない」**という考えで、私はこの種のフックは必ずフェイルオープンで書きます。

例2: 月次の運用レポート生成

CRON で毎月走らせる集計スクリプトに、Gemini CLI を組み込んだ例です。

#!/usr/bin/env bash
# scripts/monthly_summary.sh
# 月次の Cloudflare Workers ログを集計し、Gemini に異常値の検出を依頼する。
 
set -euo pipefail
 
OUTPUT_DIR="reports/$(date +%Y-%m)"
mkdir -p "$OUTPUT_DIR"
 
# 1. 集計
npx wrangler tail --format=json --search="status>=500" \
  | jq -s 'group_by(.path) | map({path: .[0].path, count: length})' \
  > "$OUTPUT_DIR/errors.json"
 
# 2. Gemini に解釈を依頼
SUMMARY=$(cat "$OUTPUT_DIR/errors.json" | gemini -p "次の API エラー集計から、急増しているエンドポイントと推定原因を3項目だけ箇条書きで。原因は『仮説』として書いて。" 2>"$OUTPUT_DIR/gemini.err" || echo "Gemini 解釈失敗")
 
# 3. レポート出力
cat > "$OUTPUT_DIR/summary.md" <<EOF
# $(date +%Y-%m) 月次エラーサマリー
 
$SUMMARY
 
---
集計データ: errors.json を参照
EOF
 
echo "✅ 月次レポート: $OUTPUT_DIR/summary.md"

このパイプラインを Antigravity の中でやろうとすると、IDE を起動して、エージェントに wrangler tail を実行させて、結果を確認して……という流れになり、CRON で無人運用するには向きません。**「人間が見ていない時間に走らせる集計は CLI で書く」**は私の中で固まっているルールです。

例3: シェル統合の深さ

地味ですが見逃せないのが、xargsparallel との相性です。たとえば 200 ファイルの README を一括で日本語化したい場合:

find docs -name "README.md" \
  | parallel -j 4 'gemini -p "次の README を日本語に翻訳してください。コード例はそのままで。" --file {} > {.}.ja.md'

これに相当する処理を Antigravity でやるには、エージェントを長時間ループで走らせる必要があり、コスト・速度ともに不利です。シェルが既に持っている並列処理の強みを使い切れるのは、CLI 系ツールの大きな美点です。

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