Antigravity の Manager Surface に Walkthroughs が増えていることに気づいたのは、いつもの朝のセッションを開いたときでした。これまで私は、新しいプロジェクトを始めるたびに Gemini とテキストでやり取りしながら、手作業でディレクトリ構造を作ったり、初期コンフィグを書いたり、環境変数を設定したりしていました。ところが 4 月のアップデート以降、その「退屈な初期化ステップ」が大幅に自動化されるようになったのです。
この 1 週間の実運用で感じたのは、「単なる機能追加」ではなく「開発の心理的負荷が下がった」ということです。このまとめで、何が変わったのか、そして実際に導入するときの注意点をお伝えします。
4月アップデートの全体像
2026 年 4 月の Antigravity アップデートは 3 つの大きな柱で構成されています。
まず Walkthroughs という新しい UI パターンが Manager Surface に統合されました。これは、プロジェクト初期化やアーキテクチャの決定、ライブラリの導入などを「対話的なステップ」として表現する仕組みです。従来は Gemini の長いテキスト応答を読んで、自分で手を動かしていましたが、Walkthroughs では「次のステップは何か」を Manager が常に提示してくれます。
次に Browser Agents の動作が改善されました。以前のバージョンでは、ブラウザを操作する必要がある処理(API ドキュメントの検索、デプロイダッシュボードの確認、GitHub Actions の実行状況確認など)がやや不安定でしたが、4 月版ではこれらの操作がずっとスムーズになっています。
そして Manager Surface 自体のレイアウト が整理されました。左パネルに Walkthroughs のリスト、中央にプレビュー、右側に詳細パネル、という 3 ペイン構成に統一され、視認性が格段に上がっています。
Walkthroughs: 何が新しいのか
Walkthroughs の最大の特徴は、「段階的な意思決定」を可視化するところです。
例えば、React + TypeScript + Tailwind の新しいプロジェクトを作ると、Antigravity は以下のようなステップを自動生成します:
- プロジェクト構造の決定 — モノレポか単一リポか、ESLint の厳密さはどうするか、といった選択肢を提示してくれます
- 環境構築の実行 — package.json と初期コンフィグが自動生成され、npm install も Antigravity が実行します
- 動作確認 — ローカル dev サーバーを起動して、ブラウザで動作を確認するまでが 1 つの Walkthrough として完結します
これまで私が手作業でやっていた 20 分を、Antigravity が 3 分で終わらせてくれるようになったわけです。ただし、完全な自動化ではなく、重要な選択肢では「あなたはどちらがお好みですか?」と聞かれるので、プロジェクトの個性が失われることはありません。
Browser Agents の改善点と実用度
Browser Agents の改善は、一言で言うと「エッジケースへの対応」が大幅に増えました。
実際に 1 週間の運用で触れた改善点を 3 つ挙げます。
JavaScript の実行待機が堅牢になった
これまでは、SPA(シングルページアプリケーション)の初期ロードを待つ際、タイムアウトになることがありました。特に API の応答が遅いダッシュボードなどでは、「ページが読み込めません」エラーが頻出していました。4 月版では、waitForNavigation の仕組みが改善され、jQuery や React の初期化完了までを正確に検知するようになっています。
フォーム入力と送信の分離 これまでは、フォーム入力と送信ボタンのクリックが 1 ステップで行われていたため、入力値の確認がしにくいことがありました。4 月版では「フォーム入力」と「送信」が明示的に分かれたステップになり、ユーザーが各段階を確認・キャンセルできるようになっています。
複数タブ・ウィンドウの管理 GitHub Actions の実行状況確認など、複数のブラウザタブが必要な操作では、以前は最初のタブが自動的に閉じられてしまい、途中でエラーになることが多かったです。4 月版では複数タブの並行運用が安定しており、「タブ A で GitHub を見ながら、タブ B で Vercel のデプロイを実行」という流れがスムーズに進みます。
ただし、一つ注意点があります。Browser Agents が改善されたのは事実ですが、ブラウザ操作が必要な処理については相変わらず「時間がかかる」という特性は変わっていません。API 仕様の検索、ドキュメント読み込み、スクリーンショットのキャプチャなど、各ステップで 2 〜 5 秒の待機が発生するため、バッチ処理として実行するときは全体で 1 〜 2 分程度見ておく方が無難です。
Manager Surface の変化と既存ワークフローへの影響
Manager Surface が 3 ペイン構成に整理されたことで、複数の Walkthrough を同時に参照・比較できるようになりました。これまでは、Walkthrough を開くと全画面になり、別の Walkthrough を見たければウィンドウを切り替える必要がありました。
実際のメリットを挙げます。
同じテーマの複数パターンを比較できる 例えば「Firebase か Supabase か」という選択を迫られたとき、これまでは一つの Walkthrough を読んだら、それを閉じて別の Walkthrough を開く、という手順を繰り返していました。4 月版では、両方の Walkthrough をサイドバイサイドで見られるため、意思決定がずっと速くなります。
既存プロジェクトへの統合を検討しやすくなった 新しい技術スタック(例えば tRPC)を既存プロジェクトに導入するかどうかを判断する際、現在のアーキテクチャと導入後の見通しを並行して確認できます。
ただし、レイアウト変更に伴う互換性の問題も発生しました。カスタム Walkthrough を独自に作成していた場合、CSS やレイアウト指定が古い形式のままだと、表示が崩れることがあります。この点については後述の「移行時の注意点」でお伝えします。
移行時の 3 つの注意点
4 月アップデートを導入する際、実際に引っかかりやすい 3 つのポイントをお伝えします。
1. 既存 Walkthrough の互換性チェック カスタムで作成した Walkthrough がある場合、新しい Manager Surface でレイアウトが崩れないか確認してください。特に、CSS Grid や Flexbox を使った細かいレイアウト指定がある場合は、新しい 3 ペインシステムに合わせて見直す必要があります。Antigravity の公式ドキュメントでは「自動マイグレーション」と言っていますが、完全ではありません。重要な Walkthrough については手動確認をお勧めします。
2. Browser Agents の処理時間を見直す 自動化スクリプトや CI/CD パイプラインで Browser Agents を使用している場合、タイムアウト値の再調整が必要です。改善されたとはいえ、複雑な操作では 2 分以上かかることもあります。デフォルトの 30 秒タイムアウトでは不足する可能性があります。
3. Manager の権限設定を確認する 新しい Walkthroughs では、ファイルシステムや環境変数への自動アクセスが増えています。チームで Antigravity を使用する場合、メンバーごとの権限が正しく設定されているか確認してください。特に、エンタープライズプランの場合、IAM との連動設定が必須です。
次のアップデートで来そうなこと(観察ベースの予測)
Manager Surface が 3 ペインになったことで、次の進化の道が見えてきました。
おそらく次のアップデートでは、Walkthrough 同士の「連鎖実行」が来ると予想します。例えば「新規プロジェクト立ち上げ」の Walkthrough を完了したら、その結果を次の「デプロイ設定」Walkthrough に自動的に渡す、というような機能です。
また、Browser Agents の さらなる高速化も期待できます。4 月版で安定性が上がったので、次のステップは「並列実行対応」かもしれません。複数のブラウザ操作を同時に実行することで、全体の処理時間を短縮する、という流れは自然なロードマップだと思います。
2026 年前半は、AI IDE の「フロー体験」が急速に進化する時期になるのではないでしょうか。Antigravity の今回のアップデートは、その波の一つに見えます。
次の新機能が出たときに素早く乗っかるためには、まずは 4 月アップデートをしっかり使いこなすことが大事です。皆さんも実際に触ってみて、開発のフローがどう変わるか、ぜひ体感してみてください。