知り合いの店主さんから「予約の確認を楽にしたいのですが、Google の AI の道具が三つあって、どれから触ればいいのか分かりません」と相談を受けたことがあります。画面を見せていただくと、タブには Antigravity、AI Studio、Stitch が並んでおりました。三つとも「作る」道具で、三つとも「AI」と名乗っています。迷われるのは当然だと思いました。
最初にお伝えしたいのは、道具の名前から選ぶのではなく、作りたいものの形から選ぶということです。機能の一覧を比べても、非エンジニアの方の迷いはほとんど晴れません。
ここから先は、形を三つに分けて、それぞれ最初に開く道具を決めてまいります。画面や機能の名称は更新が早いため、細部は各公式ページでご確認ください。ここでお渡しするのは、迷いを減らすための線引きです。
先に、作りたいものを一文にする
道具を開く前に、紙に一文だけ書いてみてください。
- 「お客さまに見せる画面の見た目を決めたい」
- 「ブラウザで開いて使える小さなアプリを、まず動かしてみたい」
- 「自分のパソコンにあるファイルや表を、繰り返し自動で整えたい」
私は壁紙アプリの運用で、ストアの画面案、小さな確認ツール、毎月の文言整理という三種類の作業を日々行っております。同じ「作る」でも、この三つは途中で手に取る道具がまるで違います。最初のうちは、すべてを一つの道具で済ませようとして、手が止まることがありました。
三つの形と、最初の一本
| 作りたいものの形 | 最初に開く道具 | 理由 | まだ頼まないこと |
|---|---|---|---|
| 画面の見た目・配置 | Stitch | 文章や参考画像から画面案を起こす用途に向いており、動く仕組みを考えずに見た目の相談ができる | データの保存や計算 |
| ブラウザで試せる小さなアプリ | AI Studio | モデルの試用と簡単なアプリづくりを、ブラウザの中で完結させやすい | パソコン内のファイル操作 |
| 手元のファイルを扱う業務ツール | Antigravity | エージェントが作業フォルダの中で読み書きと実行まで進められる | 見た目の細かな調整から始めること |
表の右端の列が、実は大切です。最初の一歩で頼むことを絞るほど、失敗の原因が見つけやすくなります。
店主さんの相談を当てはめてみる
冒頭の店主さんの場合、「予約の確認を楽にしたい」という一文は、よく読むと二つに割れていました。予約一覧の見た目を見やすくしたいのか、メールの控えを表に集めて整えたいのか、です。
前者は画面の形ですから、Stitch で一覧の見た目を相談するところから始まります。後者は手元のファイルや表を扱う形ですから、Antigravity の出番になります。一つの悩みに見えても、形が違えば最初の道具も変わるのです。
その場で私がお願いしたのは、どちらが今月いちばん困っているかを選んでいただくことだけでした。選べた時点で、迷いの半分は消えていたように思います。
迷ったときの三つの問い
形が一文で決まらないときは、次の順に自分へ尋ねてみます。
- 完成したものを、誰がどこで開きますか。自分だけなら Antigravity、不特定の人に見せるなら Stitch か AI Studio が近道です
- 途中で自分のファイルを読み書きしますか。はいなら Antigravity、いいえなら他の二つで足ります
- 見た目と仕組みのどちらが先に決まっていませんか。見た目が先なら Stitch、仕組みが先なら AI Studio か Antigravity です
三つの問いに答えると、多くの場合は一本に絞れます。二本残ったときは、費用がかからない側、あるいは失敗しても自分のファイルに影響が出ない側から始めるのが安全です。
私が最初に失敗した選び方
白状しますと、私は最初の頃、「いちばん高機能そうなもの」から触りました。画面の案だけが欲しい日にも、ファイルを操作できる道具を開いて、必要のない設定の確認に時間を使ってしまったのです。
結果は芳しくありませんでした。見た目の案は二の次になり、気づけば作業フォルダの権限の話ばかりしておりました。いまは、見た目の相談は見た目の道具に、ファイルの相談はファイルの道具に。 この線引きを守っています。
一本目が終わったあとに
一本目で作ったものは、そのまま次の道具への引き継ぎ資料になります。Stitch で決めた画面案の画像や説明文は、AI Studio や Antigravity に「この見た目で作ってください」と渡せます。順番を決めておくと、三つの道具は競合ではなく、一本の流れにつながります。
ただし、引き継ぐ前に一度だけ確認してください。渡す文章に、顧客の名前や個人情報が入っていないかどうかです。ここは、体調の悪い日でも飛ばさないようにしております。
次の一歩
今日のところは、作りたいものを一文で書き、表の中から該当する行を一つ選ぶところまでで十分です。そのうえで、その行の「まだ頼まないこと」だけは、最初の三十分は頼まないでおいてください。小さく始めた日の手触りが、次に選ぶ道具の判断を支えてくれるのだと思います。