朝の5時半に AdMob の管理画面を開きながら、もう一方のディスプレイで Antigravity の Browser Agent に夜間に巡回させたログを確認する、という日課がここ3週間続いています。きっかけは2014年から積み上げてきた壁紙アプリの広告収益が、メディエーション側の改定で少しずつ崩れ始めていたことでした。ひとりで複数アプリを抱えていると、ブラウザを開いて値を見比べる行為そのものに時間を取られます。そこに、AntigravityのBrowser AgentとClaude in Chromeを同時に使ってみたら、思っていたよりも棲み分けが綺麗に決まり、運用の心理的負担がはっきり軽くなりました。
3週間続けた中で見えてきた両者の住み分け、ぶつかった壁、そして当面の運用方針を、実際の作業に沿って書いておきます。同じように個人で複数アプリを運用している方の参考になれば幸いです。
並行運用に踏み切った動機
正直に書くと、最初は片方だけで足りるはずだと思っていました。Antigravityには Browser Agent が内蔵されていて、エディタの中からブラウザに指示を出せます。一方、Claude in Chrome はブラウザ自体に常駐するエージェントで、開いているタブの文脈を直接読みに行きます。役割が重なるなら、好きな方ひとつでよいだろうと考えるのが自然です。
ところが、実際に2014年から運用してきた壁紙アプリの広告管理を回しているうちに、エディタの中で完結する作業と、ブラウザの中で完結する作業がはっきり分かれていることに気づきました。AdMob の管理画面で eCPM の細かい変化を追いかける作業は、コードベースとは独立しています。一方、UnityAds や AppLovin MAX のSDK更新は、当然エディタ側のコードに紐づきます。両方を「ブラウザを動かす」という同じ手段で行おうとすると、頭の切り替えが頻繁に起きて、集中が削られていく感覚がありました。
5,000万ダウンロード規模になると、わずかな eCPM の改善でも月次の数字に差が出ます。だからこそ、注意の使い方を最適化したかったのです。
役割分担を試行錯誤した1週目
最初の週は、両方のエージェントに同じ作業を指示して、出力を比べていました。例えば AdMob の管理画面から先週の eCPM 比較を取ってきて整形する、という作業です。
Antigravity Browser Agent に頼むと、エディタの作業ファイル(その日の運用メモ)に直接表として追記してくれます。これは記録性の観点で気持ちよく回りました。一方、Claude in Chrome は同じ管理画面を開いた状態で、その場で対話的に「直近30日の傾向」「先週との差分」「特に下がっている枠」と質問を重ねていけます。
1週目の半ばで気づいたのは、私が求めていたのは「記録に残したい作業」と「考えるための作業」が、まったく違うサイクルだったことでした。エディタに記録したい作業は、後でgrepできる形でファイルに落ちる必要があります。考えるための作業は、ブラウザの今開いている画面と直接やりとりして、頭の中の仮説をその場で検証したいだけです。
「両方やれる」エージェントが2つあるからといって、両方に同じ仕事をさせる必要はなかった、という当たり前の結論にたどり着きました。
ぶつかった壁
2週目に入ってからは、いくつか具体的な詰まりに当たりました。書き残しておきます。
ひとつ目は、認証セッションの取り回しです。AdMob の管理画面はGoogleアカウントの認証が必要で、私のメインプロファイルには Claude Lab・Gemini Lab を含む複数の運営アカウントが紐づいています。Antigravity Browser Agent はエディタが起動するブラウザインスタンスで動くため、ログイン状態が一度クリアされると、毎回ログインのループに入ります。Claude in Chrome は自分のメインブラウザでそのまま動くので、認証は再利用されます。広告管理画面のような「ログイン済みであることが前提」のページに対しては、Claude in Chrome の方が圧倒的に摩擦が少なかったです。
ふたつ目は、コードに反映する作業との接続です。逆に、Claude in Chromeで「この管理画面の値をプロジェクトの設定ファイルに反映してほしい」と頼むと、ローカルのファイルには直接書き込めません。書き出した内容を私が手動でエディタに持っていく必要があります。Antigravity Browser Agent なら、その場でコミット直前のファイルまで編集してくれます。
3つ目は、夜間ジョブとして回したいタスクの扱いです。私は2014年からの習慣で、深夜にアプリ運用の集計や定型確認を回したいタイプです。Antigravity の Background Agent と Browser Agent を組み合わせれば、夜のうちに巡回ログを残せます。Claude in Chrome は基本的に、私がブラウザを開いている時間帯のための道具です。
数値で見えた変化
定性的な所感だけでなく、3週間で動いた数値を簡単に書いておきます。
朝の運用ルーチン全体(広告管理画面のチェック、Crashlytics のクラッシュ確認、App Store のレビュー一覧の確認)は、以前は40〜50分かかっていました。3週間後にはおおむね15〜20分で回せるようになっています。減った分のうち、純粋にエージェントが代行してくれた時間は半分くらいで、残り半分は「考えるための画面」と「記録する画面」の往復が減ったことによる時間です。
AdMob のメディエーション枠順の見直しも、Claude in Chromeで対話的に仮説を立て、Antigravity Browser Agent に翌朝の比較レポートとして書き出してもらう、という分業が定着しました。eCPM の改善幅そのものは数パーセントレンジで、まだ運用日数が足りていません。それでも、ひとりで複数アプリを抱えながら毎朝同じ品質で値を見られる状態は、続けられる感覚があります。
進行中の課題
一方で、まだ詰めきれていない点もあります。
ひとつは、Claude in Chrome 側で行った会話のログを、後から振り返れる形で残す方法です。今は週末にまとめてエクスポートする運用に落ち着いていますが、もう少し自動化したいところです。Antigravity 側に「Claude in Chrome の決定だけ取り込む」ような薄い橋渡しのスクリプトを書き始めています。
もうひとつは、Crashlytics の自動修正の組み込みです。これは別ルートで進めている検証で、Claude in Chrome の Crashlytics ダッシュボード読解と、Antigravity の Background Agent によるパッチ提案を、どこで結合させるかの設計を続けています。今のところ、ダッシュボード判断は Claude in Chrome、パッチ提案は Antigravity、という線引きが見え始めています。
当面の運用方針
3週間運用した結果、私の中での住み分けは次のように落ち着いています。
ブラウザの「今開いている画面」を中心に対話したい作業、たとえば AdMob・Crashlytics・App Store Connect・Google Play Console のような管理画面の値を読み解く作業は、Claude in Chrome に寄せます。エディタ側のファイルに記録として残したい作業、たとえば設定値の反映、リリースノートの整形、運用メモへの追記は、Antigravity Browser Agent に任せます。
両者の境目に当たる作業、たとえばダッシュボードの値からプロジェクトの設定ファイルを更新するような作業は、Claude in Chrome が要約を出して、私がそれをそのままAntigravityの会話に貼り付けて反映してもらう、という二段構えにしました。一見手数が増えるようでいて、認証セッションのループに巻き込まれないぶん、結果として速いです。
これから取り組むこと
このあと取り組みたいのは、夜間に Antigravity Background Agent が残した運用ログを、翌朝 Claude in Chrome 側から読み解く流れを安定させることです。今は私が手で橋渡ししていますが、そこを薄い静的レポート(マークダウンファイル)に揃えれば、両者の役割を崩さずに連携できる気がしています。
1997年にインターネットで国境を越えて学び始めた頃、自分が個人開発者として複数のアプリを抱えながらこんな運用をすることになるとは想像していませんでした。それでも、当時から続いている「手を動かして道具を組み合わせる」という体感は、今のAIエージェントとの付き合い方にもそのまま生きていると感じます。両方を使い分けるのは贅沢にも見えますが、ひとりで5,000万ダウンロード規模のアプリ群を回す現実の中で、どちらかを切り捨てるよりも、丁寧に住み分けたほうが結果として静かに前に進めています。
同じように個人で複数のサービスや複数アプリを抱えている方に、少しでも参考になれば幸いです。