Google Antigravity と Windsurf は、2026年現在の AI IDE 市場において最も興味深い比較対象のひとつです。なぜなら、この2つのツールは単なる競合ではなく、同じコードベースから生まれた親子関係にあるからです。Antigravity は Windsurf のコードベースをもとに Google が開発した IDE であり、その経緯を理解することが、どちらを選ぶべきかを判断する上で欠かせません。
誕生の背景 — Windsurf から Antigravity へ
2025年7月、Google は Windsurf の開発チームとライセンス契約を締結しました。CEO の Varun Mohan をはじめとするコアエンジニアリングチームが Google DeepMind に合流し、Windsurf のコード資産をベースに新たな IDE を構築しました。これが 2025年11月18日にリリースされた Google Antigravity です。
一方、Windsurf の残留資産は Cognition AI(AIコーディングエージェント「Devin」の開発元)に買収されましました。現在の Windsurf は Cognition AI の傘下で開発が続いています。
この背景を踏まえると、Antigravity は「Windsurf の進化系」ともいえますが、Google の技術基盤と Gemini モデルを核に据えた独自の方向性を歩んでいます。
基本スペック比較
| 項目 | Antigravity | Windsurf |
|---|---|---|
| 開発元 | Google DeepMind | Cognition AI |
| ベースエディタ | VS Code フォーク | VS Code フォーク |
| 主要 AI モデル | Gemini 3.1 Pro / Flash | Cascade(独自モデル) |
| 外部モデル対応 | Claude, GPT-OSS-120B | 一部対応 |
| マルチエージェント | ◎(Manager Surface) | △(限定的) |
| プラグイン対応 | スタンドアロン IDE のみ | VS Code / JetBrains / Vim |
| 料金 | 無料プレビュー(Pro は ~$20/月予定) | $15/月(Pro プラン) |
| エンタープライズ対応 | プレビュー段階 | SOC 2 Type II 準拠済み |
| 安定性 | 開発中(既知のバグあり) | 本番運用レベル |
機能比較
エージェント機能
Antigravity の最大の強みは Manager Surface です。複数の AI エージェントを並列実行し、ひとつのエージェントがコードを書きながら、別のエージェントがドキュメントを検索したりテストを実行したりすることができます。これにより、大規模なタスクを効率的に分散処理できます。
Windsurf の Cascade エージェントは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)ベースのコードベースインデックスを使い、既存コードの文脈を深く理解した上でコードを生成します。シングルエージェントとして完成度が高く、安定した動作が期待できます。
Antigravity の優位点: 大規模プロジェクトでの並列エージェント処理 Windsurf の優位点: 既存コードベースへの深い理解と安定した動作
Artifacts(成果物)機能
Antigravity では、エージェントの作業過程を Artifacts として可視化します。タスクリスト、実装プラン、スクリーンショット、ブラウザ録画などが生成され、エージェントの思考プロセスを随時確認できます。ドキュメントにコメントを付けるように、Artifact に直接フィードバックを残すことも可能です。
Windsurf にはこれに相当する機能はなく、エージェントの作業は主にチャット画面を通じて確認します。
プランニングモード vs 高速モード
Antigravity は2つの操作モードを提供しています。
プランニングモードは、エージェントが実行前に計画を立て、ウォークスルーやタスクリストを生成します。各ステップで介入の機会が与えられるため、リスクの高いタスクや大規模な変更に適しています。
高速モードは、コマンドを直接実行します。素早い実験や影響範囲が限定的なタスクに最適です。
Windsurf にも類似した概念として「Chat」(対話型)と「Write」(自律実行型)がありますが、Antigravity のモード切り替えほど明示的ではありません。
AI モデルの選択肢
Antigravity は Gemini 3.1 Pro(主力モデル)、Gemini 3 Flash(高速・低コスト)のほか、Claude Sonnet 4.6、Claude Opus 4.6、GPT-OSS-120B にも対応しています。Google IDEでありながら、競合モデルも使えるオープンさが特徴です。
Windsurf は独自の Cascade モデルを中心に、一部の外部モデルにも対応しています。モデルの選択肢は Antigravity ほど広くありません。
安定性と成熟度
現時点での最大の差は安定性です。
Antigravity は 2025年11月のリリースからまだ日が浅く、既知のセキュリティ脆弱性(バックドア攻撃リスク)や各種バグが報告されています。Google は修正対応中ですが、本番環境での使用にはリスクが伴います。また、.NET 開発に欠かせない C# Dev Kit が VS Code フォークを検出してロードを拒否するという問題も確認されています。
Windsurf は SOC 2 Type II の認証を取得しており、エンタープライズ環境での採用実績があります。安定性と信頼性においては Windsurf が大きくリードしています。
プラグインと拡張性
Windsurf は VS Code、JetBrains IDE、Vim/Neovim 向けのプラグインを提供しており、既存の開発環境に統合して使うことができます。チームに VS Code ユーザーと JetBrains ユーザーが混在していても、同じ AI アシスタントを共有できます。
Antigravity は現時点でスタンドアロン IDE のみを提供しており、プラグインは存在しません。既存のワークフローに組み込む柔軟性では Windsurf に軍配が上がります。
料金比較
Windsurf Pro は月額 $15 で提供されており、安定したサービスとして費用対効果が高いと評価されています。
Antigravity は現在パブリックプレビューとして無料で利用可能です。ただし、Gemini 3 のコンピュート費用が高いため、Google が 2026年中に有料プランを導入すると予想されています。予測される料金体系は、個人向け無料プラン(レート制限あり)、Pro プラン(~$20/月)、エンタープライズプラン(~$40〜60/ユーザー/月)です。
どちらを選ぶべきか
Antigravity がおすすめのケース
- 最新技術を積極的に試したい開発者・個人プロジェクト向け
- マルチエージェントによる並列処理を活用したい大規模タスク
- Gemini モデルとの深い統合を重視する場合
- 現時点で無料で使いたい(プレビュー期間中)
- AI IDE の未来をいち早く体験したいアーリーアダプター
Windsurf がおすすめのケース
- 本番環境での安定した運用が求められるプロジェクト
- **既存の開発環境(VS Code、JetBrains)**への統合が必要な場合
- エンタープライズのセキュリティ要件を満たす必要がある組織
- 予測可能で確実な動作を優先する開発チーム
- .NET / C# を主力言語として使用している場合
全体を振り返って
Antigravity と Windsurf は同じ起源を持ちながら、異なる方向性を歩んでいます。Antigravity は Google の技術力とマルチエージェント機能を武器に次世代の AI 開発体験を目指し、Windsurf は安定性と既存エコシステムとの統合を強みとして本番環境での採用を進めています。
個人開発者や実験的なプロジェクトには Antigravity の無料プレビューを試してみることをおすすめします。一方、チーム開発や本番サービスでの利用を想定している場合は、Windsurf の安定性が現時点では大きなアドバンテージとなるでしょう。
Antigravity の安定性と機能が成熟するにつれ、この比較は大きく変わる可能性があります。2026年後半のアップデートに注目です。