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◈ Agents & Manager/2026-10-13初級

「いつもの感覚」で決めている判断を、エージェントに渡せる文章に直す手順

頭の中だけにある判断基準を、Antigravity のエージェントが同じように使える文章へ直す手順です。過去の事例で試し、ずれた箇所だけ直す小さな検証つきです。

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アプリのストアに届いたレビューへの返信を、エージェントに任せようとする場面を思い浮かべてみてください。「返すべきものと、そっとしておくものを分けてほしい」と頼んでも、返ってくる下書きは、自分の感覚とずれた並びになりがちです。

たとえば、星1つの短いレビューに丁寧な長文が付き、機能の要望には定型の礼だけが付く、といった具合です。エージェントが悪いのではありません。頭の中でやっている仕分けを、一文も書き出していないからです。

この記事でお伝えしたいのは、判断基準は「感覚の言い換え」ではなく「過去の事例の並べ替え」から文章にするということです。コードを書かない方でも、手元の過去の仕事が5件あれば試せます。

なぜ「いつもの感覚」は渡らないのか

人が慣れた仕事でしている判断の多くは、本人にも言葉になっていません。レビュー返信なら、返すかどうかを決める前に、文面の温度や日付、同じ人の過去の書き込みまで、無意識に見ています。

エージェントに「適切に判断してください」と頼むのは、その無意識の部分を丸ごと推測に任せることです。推測は、たいてい世間一般の平均に寄ります。私の仕事の平均ではありません。

ここで一つ、線引きをしておきます。

エージェントに渡すのは「性格」ではなく「境目の例」です。

「丁寧に」「慎重に」といった性格の指定は、何も決めていないのと同じです。「この場合は返す、この場合は返さない」という境目の例が、いちばん効きます。

手順1: 直近の事例を5件、結論つきで並べる

まず、自分が実際に判断した過去の事例を5件集めます。新しい想像上の例ではなく、すでに結論を出したものです。

私は壁紙アプリのレビューを例にして、5件を選び、それぞれに「返した/返さなかった」と、そのときの理由をひと言ずつ書きました。理由は、書いている途中で変わってもかまいません。むしろ、変わった箇所が宝物です。

事例私の結論書き出して分かった理由
不具合を具体的に書いたレビュー返す再現手順が読み取れる。直したら知らせたい
機能の要望だけのレビュー返さない返信しても誰にも届かない。要望は別に記録する
感情的だが内容のない短文返さない返すと火に油になることがある
誤解にもとづく低評価返す誤解を解く一文だけで十分
お礼のレビュー返さない(まれに返す)返すのは、使い方が具体的に書かれているときだけ

表を作っている最中に、「感情的だが内容のない短文は返さない」という基準を、自分でも初めて言葉にしました。5件目の「まれに返す」は、書くまで意識していなかった例外です。

手順2: 理由を「もし〜なら」の一文に直す

次に、表の理由の列を、エージェントが条件として読める形に直します。

型はシンプルです。「もし(状況)なら(行動)。ただし(例外)のときは(別の行動)」。長くしないことが肝心です。

私が書いたのは、おおよそ次のような文でした。

返信するか迷ったら、次の順に確認してください。
1. 再現できそうな不具合が書かれている → 返信の下書きを作る
2. 機能の要望だけ → 返信せず、要望一覧に1行足す
3. 内容のない感情的な短文 → 返信せず、私に報告だけする
4. お礼 → 原則返信しない。使い方が具体的に書かれていれば下書きを作る
迷った場合は下書きを作らず、理由を一行添えて私に確認してください。

最後の一行が、実は大切です。迷ったときの行動を決めておくと、エージェントは無理に答えを作らなくなります。

手順3: 渡す前に、過去の事例で「当て直す」

ここが、この記事でいちばん伝えたい手順です。

書いた文章を、そのままルールとして登録する前に、手順1で使っていない過去の事例を3件選びます。その3件を、エージェントに「新規の依頼」として判断させてみます。

見るのは、結論が私の過去の結論と一致しているかどうかだけです。文章のうまさは見ません。

最初の当て直しでは、3件のうち1件くらいはずれるものです。たとえば、お礼のレビューすべてに下書きが付いてくる場合。原因は、文章中の「使い方が具体的に書かれていれば」の「具体的」が広すぎることにあります。

直し方は簡単です。「具体的に」を「機能名か操作が1つ以上出てくる場合」に変えて、もう一度3件を試します。今度は一致するはずです。

ずれた箇所だけを直すのが、いちばん早い近道です。全体を書き直し始めると、直した箇所と直していない箇所の区別がつかなくなります。

手順4: 例外の置き場所を決める

ルールが育ってくると、例外が増えます。増えた例外を、ルール本文に全部足していくと、読みにくくなり、エージェントも優先順位を取り違えます。

私は、本文は4項目までに保つことを勧めます、例外は「例外メモ」として別の短い段落に分けています。例外メモには、日付と一行だけ。たとえば「お礼でも、前回返信した相手には返す」のように。

数が増えてきたら、本文に昇格させるか、思い切って消すかを決めます。その見直しは、月に一度で十分だと感じています。

つまずきやすい点

最初のうちは、次の3つでつまずく方が多いはずです。私も通りました。

  • 理由を書くとき、結論に合わせて理由を作ってしまう。迷った事例をあえて混ぜると防げます
  • 当て直しの事例が、書いたときの事例と似すぎている。種類の違うものを選びます
  • 一度うまくいくと、見直しをやめてしまう。ずれは、季節や状況が変わったあとに出てきます

次にやること

今日、手元の過去の仕事から5件だけ選んで、結論と理由を表にしてみてください。ルールの文章に直すのは、その次で十分です。

エージェントに任せられる範囲は、自分の判断を自分が言葉にできる範囲と、ほぼ同じ広さなのだと、いまは思っております。

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