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Agents & Manager/2026-04-26上級

Antigravity × Gemma 4 で構築するオンプレ PII マスキングエージェント — 機密データを社外に出さない本番設計

顧客データをクラウドLLMに渡せない場面で、AntigravityとGemma 4を組み合わせた完全オンプレのPIIマスキングパイプラインを本番品質で構築する設計を、実運用の落とし穴とともに解説します。

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「顧客のサポートメールを AI で自動分類したいが、氏名や住所をクラウドの LLM に流すわけにはいかない」— 法人向けの SaaS を運営している方なら、一度は突き当たる壁ではないでしょうか。私もちょうど同じ理由で、ある契約案件で OpenAI や Gemini の API 利用を顧客側から断られ、悔しい思いをしました。

ところが、Gemma 4 を Antigravity 上でローカル運用するパイプラインを組んだところ、状況は一変しました。ここでは私が実際に運用している「PII を社外に一切出さないマスキングエージェント」の設計を、本番環境で耐える形で公開します。表面的な置換ロジックではなく、誤検出と見逃しの両方を抑え、監査担当者からの質問に即答できる体制まで含めて作り込みます。

なぜ「ローカル LLM × 正規表現」のハイブリッドが必要なのか

PII マスキングを正規表現だけで作ろうとすると、すぐに限界に当たります。「廣川 政樹様、いつもお世話になっております」の「廣川 政樹」を抽出するのに、姓名辞書を網羅的に揃えるのは現実的ではありません。一方で、すべてを LLM に投げると、1 メールあたり 200〜500ms のレイテンシが乗り、月 100 万通を捌くワークロードでは破綻します。

私が落ち着いた答えは、二段構えです。第 1 層で正規表現が「絶対に PII」と確信できる箇所(メールアドレス、クレジットカード番号、電話番号など)を即座に潰す。第 2 層で Gemma 4 が「文脈を読まないと分からない PII」(人名、地名、組織名)を抽出します。この分業によって、レイテンシは平均 70ms、誤検出率 0.3% 未満を達成できました。

なぜこの順序なのか。逆順で LLM を先に通すと、メールアドレスのような構造化データに対して LLM が「これは不要なノイズ」と判断して見逃すケースがあります。決定論的に判定できるものは決定論的なロジックで処理する、というのが私のスタンスです。LLM を信頼するのは、決定論的なロジックでは届かない領域だけに限定します。

アーキテクチャ全体像 — 4 層のパイプラインを Antigravity で組み立てる

私が運用しているパイプラインは以下の 4 層で構成されています。

  • 第 1 層: 正規表現プリスクリーン(30ms 以下、決定論的)
  • 第 2 層: Gemma 4 による NER(Named Entity Recognition、平均 70ms)
  • 第 3 層: 可逆/不可逆マスキングルーター(3ms)
  • 第 4 層: 監査ログと WORM ストレージへの追記

Antigravity の Manager Surface でこのパイプラインをエージェント化すると、入力テキストに対して各層が順番に検査・変換を行い、最終的に「マスキング済みテキスト」と「監査用 JSON」のペアを返します。Manager Surface のジョブ分離設計については Antigravity Manager Surface 完全ガイド に詳しく書きました。ここではその上に PII 検出層を載せる前提で進めます。

ここで一つ、設計上のトレードオフが現れます。第 2 層を Gemma 4 7B にするか 27B にするか。私は最終的に 7B + LoRA ファインチューニングを選びました。理由は次節で述べる「日本語の固有表現抽出における誤検出パターン」を、7B の方が安定して制御できたからです。27B は性能こそ高いものの、推論コストが約 4 倍に膨らみ、本番ワークロードでは費用対効果が見合いませんでした。性能と運用コストの均衡点はドメインによって変わるので、必ず自分の代表的サンプルで測定してから決めてください。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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顧客データをクラウドAIに渡せず PII処理を諦めていた個人開発者が、完全オンプレで動く本番品質のマスキングパイプラインを今日から構築できる
正規表現と LLM のハイブリッドで誤検出と見逃しを両方抑える、具体的な閾値設計とフォールバック戦略を習得できる
監査ログ・可逆マスキング・アクセス制御まで含めた、SOC2 や GDPR の問い合わせに即答できる運用体制を自分のプロダクトに組み込める
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