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◈ Agents & Manager/2026-05-27上級

Antigravity Agent の Record & Replay — 失敗を3分で再現する本番運用パターン

Antigravity の自律エージェントが本番で失敗した瞬間を、後からオフラインで決定的に再生する Record & Replay の設計と実装。実際に運用してきた経験から、ストレージ設計・PII マスク・ハーネスのコードまで具体的に解説します。

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✦ プレミアム記事

エージェントが黙ったのは、日曜の深夜でした。翌朝ログを開いても、止まる直前の一文は毎回違っていて、どこから読み直せばよいのか見当がつきません。個人開発で Lab のサイトを並行運用していると、この「もう一度、同じ条件で見られたら」という瞬間は週に何度も訪れます。ここで書き残すのは、その瞬間に手ぶらで立ち尽くさずに済ませるための仕掛け——エージェントの本番実行を、後からオフラインで決定的に再生する Record & Replay です。

月曜朝の小さな不審 — ログだけでは追えない失敗

数週間前のことです。日曜の深夜から月曜にかけて、夜間に動かしているエージェントの一つだけが、3 件中 1 件の頻度で「途中まで進んで止まる」状態に陥っていました。GitHub には成果物の前半 6 割だけが push され、残りは空のまま残るという、ある意味で最悪の半端な失敗です。

ログを開いて最初に気づくのは、エージェントが沈黙する前の最後の発話が毎回違うことでした。あるときはツール呼び出しの待機中、あるときはモデル戻り値を解釈している途中。共通点は「外部依存(モデル API・GitHub API・Cloudflare KV)からの応答時刻」に集中しているらしい、ということだけ。

つまり、ログを後から眺めても、その瞬間にエージェントが何を観ていたか・どんな順序で出来事が起きたかが復元できません。再現できない失敗は、原則として修正もできません。この壁を越えるために導入した Record & Replay の設計を、設計判断からコード断片・実測コストまで通しで共有します。

なぜ「ログを読むだけ」では足りないのか

自律エージェントの失敗は、従来のステートレスなリクエスト・レスポンス型の障害と性質が違います。理由は次の三つです。

第一に、エージェントの状態は モデル戻り値とツール戻り値の非決定的な相互作用 の積み重ねで決まります。同じ入力プロンプトでも、モデルが返すツール呼び出しの順序・引数のニュアンスが微妙にぶれ、結果としてツールの戻り値も変わります。

第二に、エージェントは 長尺の文脈 を持ちます。Antigravity のフラッグシップである Agent Manager で 10 ステップ以上の作業を委ねれば、コンテキストウィンドウは数万トークンに膨れ上がります。最終的な失敗の原因が 7 ステップ前のツール戻り値に潜んでいる、というのが日常茶飯事です。

第三に、エージェントの 外部副作用は巻き戻せない ことが多いのです。GitHub に push したコミット、Stripe に作った Customer、Cloudflare KV に書き込んだキー。本番では「もう一度同じ条件で走らせる」ことが許されない場面が大半です。

これら三つを同時に解決するのが Record & Replay です。具体的には次のように働きます。

  • Record: エージェントの本番実行中に、すべての外部境界(モデル API・ツール API・時間)への入出力を構造化して記録します
  • Replay: 記録を読み込み、ローカルで決定的にエージェントを再実行します。外部 API は実際には呼ばず、記録された戻り値を返すスタブが代わりに応えます
  • Bisect: 失敗時点の前後でステップを切り出し、原因区間を二分探索で絞り込みます
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この記事で得られること
✦失敗したエージェント実行を 3 分で再現できる Record & Replay ハーネスを TypeScript で実装する手順がわかります
✦Cloudflare R2 と KV を組み合わせた記録ストアの実測コスト(月 ¥48 程度)と TTL 設計が理解できます
✦PII マスク・モデル戻り値の再現性・タイムマシン的デバッグの落とし穴を、実際の失敗事例から学べます
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