Antigravity を使い始めて最初に「あれ?」と思う瞬間が、たいていここです。タブキーを押しても何も起きありません。補完候補は出るけれど、プロジェクトで使っているライブラリとまったく関係のない書き方を提案してくる。隣の画面でさっさとコードを書き進めている人を見ながら、「私の設定、何か間違っているのかな」と感じた方もいるのではないでしょうか。
タブ補完は Antigravity の使い心地を大きく左右する機能です。動かないまま放置していると、本来得られるはずの開発速度が出ず、AI IDE の恩恵を半分も享受できていない状態になります。補完が効かない原因を4つのパターンに分けて整理し、それぞれの具体的な解決手順を順番にご紹介します。
まず確認すること:補完機能が有効になっているか
一番見落としやすいのが「そもそも補完機能が無効になっている」という状況です。初回インストール直後や設定をリセットした後に起きやすく、気づかないまま「バグかな?」と思い込んでしまうケースが意外と多いです。
確認手順はシンプルです。Antigravity の設定画面(ショートカット ⌘, または Ctrl+,)を開き、「AI Completions」セクションを探してください。
確認すべき項目は2つです。
- Enable Tab Completion がオン(有効)になっているか
- Model for Completions に
gemini-flash-lite等のモデルが設定されているか(Noneになっていると補完モデルが無効化されます)
プロジェクト単位で設定を上書きしている場合は、.antigravity/settings.json も確認しましょう。
// .antigravity/settings.json の例
{
"completions": {
"enabled": true,
"model": "gemini-flash-lite",
"triggerDelay": 150
}
}"enabled": false になっていれば、それが直接の原因です。true に変えて保存した後、Antigravity を再起動してみてください。
補完候補がまったく表示されない:接続環境とファイル設定を見直す
設定は正しいのに候補が出ない場合、次に疑うべきはネットワーク接続とファイルタイプの設定です。
ネットワーク接続を確認する
Antigravity のタブ補完はクラウド API を経由して生成されます。オフライン環境、社内プロキシを経由する環境、VPN 接続中の環境では、API への通信がブロックされて補完が届かないことがあります。
# Google の生成AI API への疎通確認(ターミナルで実行)
curl -I https://generativelanguage.googleapis.com
# HTTP/2 200 が返れば接続は問題なし
# タイムアウトや 403 が返る場合はネットワーク設定を確認する会社のネットワークを使っている場合は、Antigravity が使用するドメイン(*.googleapis.com)がプロキシの許可リストに含まれているか確認してみましょう。
対象ファイルタイプが除外設定になっていないか
設定画面の「Excluded Languages」に、意図せず .ts や .tsx が追加されていないか確認してください。補完が特定のファイルタイプだけ動かない場合は、このリストに誤って登録されている可能性があります。
また、5,000行を超えるような大きなファイルでは、補完エンジンがコンテキストを処理しきれず、補完が無効化されることがあります。このときはファイルの分割を検討するか、補完ではなくエージェントへの直接指示という形に切り替えるのが実用的な対処です。
補完候補は出るが的外れ:コンテキストを整える
「補完自体は動いているが、提案内容がプロジェクトと噛み合っていない」というケースは、コンテキスト不足が原因であることがほとんどです。補完モデルは開いているファイルの周辺情報をもとに候補を生成しますが、その情報が薄いと汎用的な提案しか返してきません。
プロジェクトルールファイルで方針を固定する
.antigravity/rules.md(またはプロジェクトルートの RULES.md)に、プロジェクト固有のコーディング規則を記述しておくと、補完の「方向性」がプロジェクトのスタイルに合うように変わります。大げさな量を書く必要はなく、3〜5行でも効果が出ます。
# .antigravity/rules.md
## コーディング規則
- 状態管理は Zustand を使用(Redux・Recoil は使わない)
- API クライアントは src/lib/api.ts に集約する
- スタイリングは Tailwind CSS(styled-components は使わない)
- 非同期処理は async/await で書く(Promise チェーン禁止)このファイルを用意した後は、Antigravity を再起動して補完キャッシュをクリアしてください。補完候補の傾向が明らかに変わるのが実感できると思います。
関連ファイルを Workspace に含める
補完モデルが参照できるのは、Workspace に含まれているファイルに限られます。型定義ファイル(.d.ts)、package.json、tsconfig.json などが Workspace から外れていると、ライブラリの API シグネチャを参照できず、補完の質が落ちます。
Workspace 設定(⌘⇧P → 「Antigravity: Configure Workspace」)を開いて、必要なファイルが含まれているか確認してみましょう。
TypeScript の型補完が弱いとき
TypeScript プロジェクトで「型が補完されない」「エイリアスパスが候補に出ない」という問題は、tsconfig.json の認識が原因であることが多いです。
特にモノレポ構成や tsconfig.json が複数の階層に存在するプロジェクトでは、Antigravity がどの設定ファイルを参照すればいいか判断できず、型情報を正しく取得できないことがあります。
確認方法として、@/components や ~/lib などのパスエイリアスが補完候補に出ているかを試してみてください。出ていない場合は、設定画面の「TypeScript」→「Config File Path」でプロジェクトの tsconfig.json へのパスを明示的に指定します。
// tsconfig.json のパスエイリアス設定例
{
"compilerOptions": {
"baseUrl": ".",
"paths": {
"@/*": ["src/*"],
"~/lib/*": ["lib/*"]
}
}
}この設定を Antigravity が正しく認識していれば、@/ と入力した時点でエイリアス配下のファイルが補完候補に出てくるはずです。
それでも直らないとき:キャッシュクリアとログ確認
ここまでの手順で解決しない場合、補完のキャッシュが壊れているか、補完エンジン自体で問題が起きている可能性があります。
キャッシュをクリアする
# macOS の場合
rm -rf ~/Library/Caches/Antigravity/completions-cache
rm -rf ~/Library/Application\ Support/Antigravity/model-cache
# Windows の場合(PowerShell)
# Remove-Item -Recurse -Force "$env:LOCALAPPDATA\Antigravity\completions-cache"削除後、Antigravity を完全に終了してから再起動してください。Dock やタスクバーに残ったまま「再起動」しただけでは、キャッシュがクリアされないことがあります。
VS Code 版の Antigravity 拡張機能を使っている場合は、コマンドパレット(⌘⇧P)から「Antigravity: Reset Completions Cache」を実行する方法もあります。
補完ログでエラーを確認する
補完が失敗している原因を特定するには、出力ログの確認が最も確実です。
メニューバー → View → Output を開き、ドロップダウンメニューから「Antigravity Completions」を選択してください。
代表的なエラーと対処法は以下の通りです。
401 Unauthorized→ アカウントの再ログインが必要です429 Too Many Requests→ プランの利用上限に達しています。しばらく待つか、プランのアップグレードを検討してください5xx系エラー → サーバー側の一時的な問題です。数分待ってから再試行すると解消することが多いです
ログにエラーが出ていなければ、補完エンジン自体は動いています。このときは先ほどのコンテキスト・ルールファイルの設定を見直すことで改善できることが多いです。
今日試してほしいこと
タブ補完が動かない問題の大半は「有効化設定の見落とし」か「コンテキスト不足」のどちらかです。まずは設定画面の「AI Completions」を開いて、補完が有効になっているかを確認するところから始めてみてください。
的外れな提案が続いているなら、.antigravity/rules.md にプロジェクトの方針を3〜5行書き込むだけで、補完の質が変わることがあります。まだ試したことのない方は、今日のプロジェクトでぜひ一度やってみてください。